2021 Fiscal Year Research-status Report
イモリ切断損傷脊髄の完全再生を担う再生細胞の分化多能性と組織再構築能の検証
Project/Area Number |
21K20747
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
関 亮平 関西医科大学, 医学部, 助教 (40746624)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 有尾両生類 / 脊髄再生 / ニューロスフィア / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イモリ脊髄損傷後にその再生を担う細胞(以下、再生細胞と呼ぶ)の分離培養法を開発することと、再生細胞の分化多能性の維持や組織再構築能の発揮に係る細胞内シグナル経路や接着分子を明らかにすることである。当該年度は、まず再生細胞の分離培養法を確立するにあたって、脊髄を損傷していないイベリアトゲイモリを用いて、その中枢神経系組織から神経幹細胞を回収し培養する方法を検討した。その結果、マウス等哺乳類における神経幹細胞の一般的な培養法(ニューロスフィア法)をベースとした手法で、未分化性を維持したまま培養することが可能であることを発見した。ニューロスフィアで発現することが知られている遺伝子(NestinやGFAP等)の発現があることも確認し、さらに、得られたニューロスフィアを分化条件下で培養すると、マウス等哺乳類と同様にニューロンやグリア細胞へと分化することも明らかにした。想定外の発見として、脳由来の細胞と脊髄由来の細胞とで形成されるニューロスフィアの形態に違いがあったことが挙げられる。この点については、マーカー遺伝子の発現や分化能の差異等、分子レベルでの検証を進めている。イベリアトゲイモリの中枢神経系からのニューロスフィア培養に成功したという成果については、現在論文にまとめている。 脊髄組織からのニューロスフィアの培養法が確立できたため、次に脊髄損傷を施したイモリから得た細胞をこの方法で培養することを試みた。その結果、脊髄切断損傷後2週間の時点において、切断部位周辺の脊髄から少数ではあるが細胞を回収することができた。現在、この細胞を培養してニューロスフィア形成能の有無を調査している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初は、十分な数の細胞を脊髄組織から得ることができず、これを解決するために予定外の試行を複数回要した。また、イベリアトゲイモリに交差性のある抗体の選定にも時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄損傷個体から再生細胞を回収し、これまでに確立した方法に従い培養した後に、マーカー遺伝子の発現や分化多能性を解析する。培養条件下で分化多能性が消失もしくは変化する可能性を考慮し、回収直後の再生細胞と一定期間培養した後の細胞の遺伝子発現プロファイルを比較する。分化多能性の消失・変化が示唆された場合には、培養条件の改変を検討する。イモリ由来の血清を添加することはその一案である。 分化能の検証にあたっては、ニューロンやグリア細胞などの神経系の細胞に加え、筋肉・骨・軟骨等の中胚葉性の細胞への分化が可能かどうかも解析する。先行研究で確立されている各細胞種への分化誘導条件下で再生細胞を培養することでこれを検証する。これらの細胞への分化は、マーカー遺伝子に対するRT-PCRや免疫染色により評価する。 次に、成体マウス脊髄由来の神経幹細胞を上記計画で開発した条件で培養するか、あるいはイモリ再生細胞で特異的に発現する転写因子の遺伝子導入によるダイレクトリプログラミングを行い、発現遺伝子や分化能の検証を通じてマウス細胞におけるイモリ再生細胞の表現型の再現を試みる。マウス細胞におけるイモリ再生細胞の表現型再現が確認された段階で、この“イモリ再生細胞化したマウス細胞”をマウス脊髄損傷モデルに移植し、マウス脊髄損傷環境における神経再生への関与を検証する。これにより、イモリ脊髄再生原理の哺乳類への応用の実現可能性に迫る。
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Causes of Carryover |
当該年度は、イモリ再生細胞の培養法を確立するにあたって、使用する動物数を最小限にするために小スケールの実験を行い、その結果を受けて次の小スケール実験へと反映させるという進め方をとった。結果的に、培養法を確立するまでに当初予定していた以上に小スケール実験を繰り返すこととなったため、実験計画が全体的に後倒しになった。そのために、必要な試薬等の購入が次年度へと持ち越しとなった。 イモリの僅かな脊髄組織から細胞を回収するという技術も向上したため、次年度は培養実験のルーチン化と大スケール化を図り、当初の予定よりも短い期間でデータを得る予定である。 また、新型コロナウイルスの蔓延により参加予定の学会がオンライン化したため、旅費の執行額が0円となった。
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Research Products
(6 results)