2021 Fiscal Year Research-status Report
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによるRNA修飾制御機構の解析
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21K20761
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
平野 港 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 特任研究員 (30901029)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アルボウイルス / ウイルス複製 / RNA修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスは致死的な感染症を引き起こし、治療法開発のため感染機構の基盤情報が必要とされている。本研究では同ウイルスの核タンパク質 (N) はRNA修飾を介し、ウイルス複製促進/宿主免疫制御を行う機構を持つのではないかという仮説のもと、解析を行う。申請者らが樹立したウイルスの複製評価系であるミニゲノム系、およびtrVLPs系等を用いて解析を行う。RNA修飾の生物学的意義に関しては近年精力的に研究されているが、ウイルス由来酵素による修飾制御を示した研究は無く、新規の情報を提供できると考えられる。本年度では、CCHFV Nタンパク質のアデニルメチル基転移酵素様モチーフであるNPPYモチーフに変異を導入した変異体を作出し、解析を行った。ミニゲノムの活性化によるLuciferase活性を測定したところ、変異導入において優位な活性減少が認められた。また、CCHFVの近縁ウイルスであるハザラウイルス (HAZV) を用いた解析においても同様の結果が得られた。NPPYモチーフがウイルス複製を促進する因子であることが示された。次に、宿主RNA修飾関連因子のノックダウンを行い、HAZVを用いた感染モデルにてウイルス複製への影響を評価した。結果、一部RNAを修飾促進因子のノックダウンにおいて力価の優位な減少が認められ、RNA修飾のウイルス複製への影響が示された。現在、次世代シークエンス解析のための予備検討を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、CCHFVおよびHAZV Nタンパク質のアデニルメチル基転移酵素様モチーフであるNPPYモチーフに変異を導入したプラスミドを作出した。ヒト腎由来細胞に野生型および変異型のプラスミドをトランスフェクションし、分泌型ナノルシフェラーゼ活性を元にミニゲノム活性を測定した。結果、変異導入において優位な活性減少が認められた。NPPYモチーフがウイルス複製を促進する因子であることが示された。ただし、ネガティブコントロールとして用いたウイルス複製を行うことができないRNA依存性RNAポリメラーゼ変異型と比較すると、ある程度の活性が認められることから、ウイルス複製に必須ではなく、あくまで補助因子としての機能であることが考察された。次に、SW13細胞を用い、RNAi`によりRNA修飾関連因子であるMETTL3、KIAA1429、FTOのノックダウンを行い、HAZV感染時のウイルス複製への影響を評価した。結果、RNAのメチル化を担うMETTL3およびKI11A429のノックダウン時にはウイルス複製の低下が認められた。一方で脱メチル化を担うFTOのノックアウト時には減少が認められなかった。RNAのメチル化がウイルス複製を促進することが示唆された。現在、次世代シークエンス解析のための予備検討を実施している。具体的には抗メチル化RNA抗体を用いたRNA免疫沈降 (RIP)を行った上でRT-qPCRによりRNA量の定量を行い、メチル化RNAの検出を試みている。結果、宿主の既知メチル化mRNAおよびウイルスミニゲノムRNAの沈降が認められた。これは実験系が機能し、なおかつウイルスゲノムがメチル化されていることを示唆している。今後これらのサンプルを用いて次世代シークエンスによりメチル化部位の特定を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、次世代シークエンシング法を確立し、メチル化RNA配列を同定する。現在、RT-qPCRによる予備検討は完了している。次の段階として、ウイルスおよび宿主RNA修飾関連因子を変異およびノックダウンした際の修飾の変動を定量する。そして、次世代シークエンシングによる修飾配列の同定を試みる。次に修飾のウイルスRNA動態への直接的影響を示すため、Nおよび修飾対象のウイルスRNA配列に変異を導入し、ウイルス複製過程を段階的に評価可能な一回感染性粒子系にて検証する。CCHFVはBSL-4ウイルスであるため感染性ウイルスを用いた検証はHAZV遺伝子操作系を用いて行う。HAZVの遺伝子操作系は現在樹立を試みている。必要に応じて、同操作系を持つイギリスのDr. Roger Hewson等のグループにアドバイスを求める。同氏とは共同研究者を通し、コンタクトは確立している。最後に、Nによる宿主RNAへの修飾が自然免疫に与える影響を解析するため、次世代シークエンスにて同定されたRNAについてノックダウン等を行い、一回感染性粒子系によりウイルス複製への影響を解析する。抗ウイルス効果が大きい遺伝子についてRNA動態のレポーターアッセイを構築し、修飾対象配列への変異導入によりRNA修飾のRNA安定性、翻訳効率等への影響を検証する。現在までに宿主RNA修飾関連因子のノックダウンによるミニゲノム複製への影響は示されており、本実験系は稼働することが確認されている。宿主因子の同定が完了すれば、問題なく実施することができると考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症およびウクライナ等国際情勢の変化により、物流に遅れが生じたため。現在、滞っていた物品類については発注が進んでおり、近日中に使用完了する見込みである。
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Research Products
(2 results)