2021 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎モデルにおけるIL-22の有効性の検討
Project/Area Number |
21K20763
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩永 直樹 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40912499)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 薬剤耐性緑膿菌 / 人工呼吸器関連肺炎 / IL-22 |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤耐性菌は主に院内肺炎、特に人工呼吸器関連肺炎の原因として多く、有効な治療法が確立されておらず、死亡率も高い。一方で、Type17サイトカイン (IL-17、IL-22) は上下気道や腸管の粘膜免疫で重要な役割を担っているが、詳細な機序はまだ不明な点も多い。IL-17は、Th17 cellsやγδ細胞、ILC3がその主な産生細胞になり、その受容体はIL-17RAとIL-17RCのヘテロダイマーで構成され、上皮細胞や線維芽細胞に広く分布し、好中球の遊走等によって感染防御に寄与している 。一方、IL-22は抗菌ペプチドの産生や組織の修復、更にはタイトジャンクションの増強等、粘膜免疫において不可欠なものである。これまでVAPモデルの動物実験において、VAP後にIL-22を含めたType17サイトカイン産生の低下が報告され、一方では、緑膿菌により分泌されるProtease IVがIL-22を分解し肺炎を増悪させる等も報告されている。本研究は、IL-22の投与が多剤耐性緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎モデルを改善させるかを検討する。まず、耐性緑膿菌によるVAPモデル確立のため、菌量を1x10^4 CFU、5x10^4 CFU、1x10^5 CFUの3群に分けて生存・体重変化を比較検討した。どの群も全マウスが生存したが、1x10^5 CFU投与群のマウスにおいて、最大20%前後の体重減少を認め、当該菌量を至適菌量とした。1ugのIL-22を感染2時間前に気管内投与し体重変化を比較したが有意な改善を認めなかったため、今後はより半減期の長いIL-22:Fcの全身投与で改善を認めるか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チューブをマウスの気管内に留置する手技の習得に時間を要したため、多少の遅れが出ているが、今後の計画の修正で対応可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは感染4時間前に、4ugのIL-22:Fcを腹腔内投与し、マウスの生存・体重変化の比較により、感染予防効果を確認する。次に感染24時間後の肺及び脾臓の生菌数を比較し、BALF中のサイトカイン (IL-17A, IFNg, IL-22)の測定、肺組織中のIl1, Il6, Tnfa, Il17a, Il17f, Il22, Il22ra2, Ccr2, Ccl2, Reg3g, S100a8, S100a9, Saa1, Elaneの発現をreal time RT-PCRで確認する。肺内炎症細胞の評価のため、肺のDigestion検体をflow cytometryで評価し、また肺組織をH&E染色で比較する。次に感染12時間後 (菌量によるバイアスがかからないように、両群のCFUに差がないことを確認する) の肺検体を用いてunbiased Bulk RNA sequencingを行い、RNAの発現を網羅的に解析する。前述の検討で抗菌ペプチド (Reg3g, S100a8, S100a9)に差を認めた場合には、同ペプチドの気管内投与で病態を改善できるか確認する。また抗IL-22抗体の気管内投与で病態の悪化を認めるかも検討する。
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Causes of Carryover |
手技の習得に想定以上に時間を要したためやや計画の遂行が遅れ、次年度使用額が生じた。今年度は多くのマウス実験を予定しており、経費の約40%をその購入費・飼育費への支出を予定している。1匹約2000円で、計500匹程で約56万円の見込み。ELISAキットは1キット10万円で3キット分とし、RNAシーケンス(外注)に約30万円の支出を見込み、残りをreal time RT-PCRに必要なプライマー、酵素類、フローサイトメトリーに必要な抗体等の消耗品に充てる。
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