2021 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌由来のオメガ3脂肪酸代謝物を介した宿主免疫制御システムの解明
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21K20769
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
雑賀 あずさ 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, 特任研究員 (70909754)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | オメガ3脂肪酸 / 炎症 / アレルギー性皮膚炎 / 腸内細菌 / 脂肪酸代謝物 / リピドミクス / 皮膚 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌によって代謝・産生されるオメガ3脂肪酸代謝物が宿主に与える影響を明らかにするために、腸内細菌由来の複数のユニークな脂質代謝物を含む独自に保有する脂質代謝物ライブラリを活用した検討を進めた。まず初めに、腸内細菌由来のオメガ3脂肪酸代謝物の責任受容体を明らかにするために、いくつかのGタンパク質共役型受容体や核内受容体の活性化をレポーターアッセイにより評価した。その結果、異なる受容体に対するリガンド活性を持つオメガ3脂肪酸代謝物を見いだすことができた。さらに、受容体を強く活性化するオメガ3脂肪酸代謝物をアレルギー炎症性疾患モデルマウスに投与し、病態観察および免疫学的な解析を行うことで、脂肪酸代謝物が宿主免疫応答に与える影響を調べた。その結果、アレルギー性皮膚炎マウスモデルにおいて抗炎症作用を示すオメガ3脂肪酸代謝物を複数同定することができた。これら脂肪酸代謝物について、作用メカニズムの解明を進めたところ、それぞれが異なる標的細胞に作用して、抗炎症作用を示すことが分かった。今後は、標的細胞を用いたin vitroの解析を進めることで細胞・分子レベルでの詳細な作用機序の解明を進めていく。さらに、液体クロマトグラフィーと三連四重極型質量分析計を用いた腸内細菌由来のオメガ3脂肪酸代謝物の定量分析システムを確立し、本システムを用いて、マウスやヒトの生体サンプルに含まれる腸内細菌由来オメガ3脂肪酸代謝物の定量解析を実施することができた。以上の研究から得られた、生体内における腸内細菌由来オメガ3脂肪酸代謝物の生理機能解明に関する知見は、脂質代謝物の観点から食事-腸内細菌-免疫応答の相互作用を理解するために重要な基礎情報であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自の腸内細菌由来のオメガ3脂肪酸代謝物ライブラリを活用し、脂肪酸代謝物の責任受容体を明らかにすることができた。さらに、マウスモデルを用いた解析から、アレルギー性皮膚炎を抑制する脂肪酸代謝物を複数見いだし、作用メカニズムの解明を進めることができた。加えて、腸内細菌由来のオメガ3脂肪酸代謝物の定量分析システムを立ち上げることで、次年度の研究計画を進めるための基盤を確立することができた。したがって、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、これまでに見いだしたアレルギー炎症性疾患の抑制に働くオメガ3脂肪酸代謝物の詳細な作用機序解明を進める。加えて、高分解能質量分析計を用いて、新規オメガ3脂肪酸代謝物の探索的研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究に使用する試薬・物品の調達に遅れが生じた。そのため、関連する実験用マウスや試薬を次年度に購入することにした。
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