2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of airway epithelial barrier mechanism in pulmonary MAC disease
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21K20782
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
塩沢 綾子 東邦大学, 医学部, 助教(寄付講座) (00912966)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 非結核性抗酸菌症 / 宿主応答 / 上皮バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的と概要】肺非結核性抗酸菌症は、年単位の抗菌薬の投与をもってしても治療困難な難治性の呼吸器感染症である。本研究では、肺非結核性抗酸菌症の起因菌として最も多い、Mycobacterium avium(M.avium)に焦点を当てた。M.aviumに感染した患者では気道上皮バリア機能の低下が指摘されている。申請者は去痰剤の一種であるN-アセチルシステインをM.aviumに感染した気道上皮細胞およびマウスに投与すると、感染気道上皮の抗菌ペプチドの産生が誘導され、菌数が減少することを見出した。本研究は、M.aviumに感染した気道上皮細胞の免疫反応を解析することでより有効な治療法の発見を目指すものである。
【研究の成果】マウスの肺胞上皮細胞にM. avium臨床分離株を感染させると、オートファゴソームマーカーであるLC3の発現が減少することが分かった。PCRアレイ解析では感染細胞のmTORとその上流因子であるSlc37a4シグナリングへの影響が示唆された。なお、N-acetyl-cysteine(NAC)を投与すると菌数の減少とともにいずれのmRNAの発現の回復がみられた。非結核性抗酸菌が宿主細胞のオートファジーに及ぼす影響についての報告は少なく、本検討ではM. aviumは感染気道上皮細胞のオートファジーを抑制して慢性感染に至る可能性と、NACの免疫補助剤としての可能性が示唆された。今後は解析対象を気管・気管支上皮に広げ、NACに関わらず宿主細胞のオートファジーを促進する薬剤の使用を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体として、新型コロナウイルス感染症の流行のため、必要物品の納入の遅れなどから予定通りの実験ができなかった。中でも、申請者は研究の対象としてマウス由来の気管・気管支上皮細胞を使用することを予定していたが、該当細胞の入手に想定外の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
① M. avium感染細胞におけるオートファジー抑制メカニズムの解析:LC3の誘導についてウエスタンブロット法を用いてタンパク質レベルでの解析を実施する。 ② M. avium感染細胞におけるNACの作用点の詳細解析:NACは一般的にはオートファジーを抑制すると考えられている。M.aviumの感染により宿主細胞のオートファジーが抑制され、宿主細胞に不利に働くということであれば、NACよりもより効果的にオートファジーを促進する薬剤を試用することを検討する。 ③ M. avium感染マウスにおける①及び②の検証:マウス肺を用いて①および②の検証を組織免疫染色やリアルタイムPCR、フローサイトメトリーを実施し引き続き検証する。 ④ 病原因子としてのM. avium菌株の全ゲノム解析:①、②の検討で菌株間で結果に差が生じるのか、またその差はどのような特徴を持つ菌株に見られるのか次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析を試みる。
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Causes of Carryover |
必要な細胞の到着を待った分、研究計画が後方にずれ込んだため次年度使用額が生じた。 次年度使用額と合わせて、実験に使用する培地や試薬、実験動物などを購入予定である。
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