2021 Fiscal Year Research-status Report
がん幹細胞を標的にした新規近赤外光線免疫療法の開発
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21K20796
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡田 隆平 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (60806454)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 近赤外光線免疫療法 / 光免疫療法 / がん幹細胞 / 頭頸部癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに対する近赤外光線免疫療法(光免疫療法)は細胞特異的な治療法として開発された治療法である。標的細胞の膜蛋白に対するモノクローナル抗体に特殊な色素を結合させた抗体薬物複合体を点滴で投与し、約1日後に薬物を励起させる光を照射することで、薬物が結合している細胞のみが特異的に破壊される。再発転移頭頸部癌に対するEGFRを標的とした近赤外光線免疫療法の国際共同第三相治験が現在進行中で、2020年には世界に先駆け本邦で初めて頭頸部癌に対して条件付き承認された。現在はEGFRに対する治療のみが臨床応用されているが、抗体の種類を変えることにより様々な細胞を局所で特異的に破壊できることが本治療法の最大の利点である。 一方で、がん幹細胞は腫瘍を作ることのできる細胞(Tumor-initiating cells)とされ、少数の細胞で腫瘍を形成することができる上に、放射線治療や化学療法に抵抗性を持つことがわかっている。また、がん幹細胞マーカーを発現してる細胞の割合が多い癌は予後が不良とされている。本研究では、放射線治療や化学療法といった従来の方法で死滅させることが難しい、がん幹細胞を標的とした近赤外光線免疫療法を確立することを目的としている。 具体的には、がん幹細胞マーカーを認識する抗体を用いて抗体薬物複合体を作成し、質的評価を行う。また、培養細胞に対する効果を証明したのちに、マウスモデルでの有用性の評価を行う。その際に腫瘍に起きる変化を多角的に評価していく。さらに、単独療法としての有用性が示されたのちに、他治療との併用療法についても有用性を検討していく。本治療が確立されれば、今まで難治とされてきたがんも治癒に導くことができる可能性があり、臨床的な発展性を秘めていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に使用する光学系機器の導入は完了した。また、使用する細胞株を決定し、抗体も入手した。抗体薬物複合体の作成に必要な色素の入手が困難であり、やや遅れている状況だが、近日中に入手できる予定である。実験設備が当研究室のみでは不十分なため、本学の他研究室と協力して実験を進めていく体勢を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のごとく試薬の入手遅延のため研究が遅れているが、近日中に入手可能であり、研究も進められる見込みである。新年度はまず、抗体薬物複合体を作成し、品質評価を行う。問題なければ、培養細胞を用いて新規治療の効果を検証し、さらにマウスモデルの実験まで進めようと計画をしている。
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Causes of Carryover |
試薬の入手が遅れたために実験も遅延し、研究費の余剰が生じた。新年度に実験を進めていくことで使用する予定である。
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