胆道腫瘍発生におけるKras、Wntシグナルの機能的役割とその分子機構の解析

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K20801
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 長尾 宗政 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20907860)
• Project Period (FY): 2021-08-30 – 2023-03-31
• Keywords: 胆管癌 / 胆嚢癌 / 胆道腫瘍

Outline of Annual Research Achievements

今年度は遺伝子改変マウスおよびヒト胆道腫瘍の術後標本を用いて、肝外胆管および胆嚢におけるKrasおよびcanonical WNT シグナルの機能的役割について解析を行った。マウス胆道においてKrasおよびWntシグナルを同時に活性化した結果、胆嚢にヒト胃型intracystic papillary neoplasm (ICPN)、および肝外胆管にbiliary intraepithelial neoplasia (BilIN)に酷似した胆道腫瘍が形成された。さらに、これらの胆道腫瘍から樹立したスフェロイドを用いてxenograft実験を行った結果、低い確率であるものの、浸潤癌に進行することが示された。胆道腫瘍スフェロイドを用いた網羅的遺伝子発現解析にて、腫瘍スフェロイドでは正常マウス胆道スフェロイドと比較してc-MycとTGF-βシグナルに関連する遺伝子の発現上昇がみられた。c-Mycのノックダウンもしくは阻害剤にて胆道腫瘍スフェロイドの増殖が低下した。一方でSmad4/Tgfbr2のノックダウンもしくはTGF-βシグナル阻害剤にて胆道腫瘍スフェロイドの増殖が上昇し、浸潤癌への進行が促進された。マウスの結果と一致して、ヒト胃型ICPN標本ではKras、βカテニン、c-MycおよびTGFβシグナルがいずれも活性化していた。以上より、KrasとWNTシグナルの同時の活性化によりICPNとBilINが形成され
、胆道癌へ進展することが明らかになった。さらに、その機序として、c-Mycが腫瘍促進的に、一方でTGFβシグナルが腫瘍抑制的に働いていることが示された。
以上の研究結果を、Cancer Research誌に報告した。

Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

マウス肝外胆管および胆嚢においてKrasおよびcanonical WNT シグナルの活性化により胆道腫瘍(BilINおよびICPN様病変)が形成することは事前に明らかとなっていたが、今年度はその機能的解析およびマウスBilINおよびICPNが前癌病変であるかの検討、ヒトICPNでの蛋白発現について解析を行った。解析の結果をまとめ、学術誌に報告することができた。

Strategy for Future Research Activity

今後はヒト胆道オルガノイドを樹立し、KasやWntの発現や、今回のマウスで得られた知見をヒト胆道オルガノイドでも検証する。
また、今回の解析手法を用いて、他の胆道腫瘍形成メカニズム解析を行っていく。

Causes of Carryover

今後はこれまでの研究内容をさらに研鑽し、学会や雑誌等へ報告していくために必要と考えたため。
具体的にはヒト胆道オルガノイドを樹立し、KasやWntの発現や、今回のマウスで得られた知見をヒト胆道オルガノイドでも検証する。また、今回の解析手法を用いて、他の胆道腫瘍形成メカニズム解析を行っていく。

Research Products

• [Journal Article] Concurrent activation of Kras and canonical Wnt signaling induces premalignant lesions that progress to extrahepatic biliary cancer in mice. (2022)
  • Author(s): Nagao M, Fukuda A, Omatsu M, Namikawa M, Sono M, Fukunaga Y, Masuda T, Araki O, Yoshikawa T, Ogawa S, Masuo K, Goto N, Hiramatsu Y, Muta Y, Tsuda M, Maruno T, Nakanishi Y, Taketo MM, Ferrer J, Tsuruyama T, Nakanuma Y, Taura K, Uemoto S, Seno H.
  • Journal Title: Cancer Res. Volume: 2176 Pages: -
  • DOI: 10.1158/0008-5472.CAN-21-2176
  • Peer Reviewed