2021 Fiscal Year Research-status Report
膵がんにおける術前in situワクチン療法の開発
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21K20802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 浩和 京都大学, 医学研究科, 医員 (60911823)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | がんワクチン / 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
最難治がんの膵がんは根治切除後の再発率が高く、術後再発予防のための新規治療法の開発が急務である。術後にミクロレベルで残存する腫瘍細胞を排除するには、長期にわたり全身性の抗腫瘍効果が期待できるがん免疫療法が有望である。腫瘍に自然免疫賦活剤を直接注入するin situワクチン療法(ISV: In Situ Vaccine)は腫瘍自身をワクチン抗原のソースとして利用し、局所療法で副作用を抑えつつ全身性の抗腫瘍免疫を誘導できるという利点を有する。本研究は、膵がんモデルマウスで摘出前の腫瘍に新規TLR9リガンドK3-SPGの術前ISVを施行し、術後の再発抑制効果について明らかにする。 申請者が所属する京都大学消化器内科研究室で所有する遺伝子改変膵がんモデルマウス(KPC:LSL-KrasG12D/+, Trp53R172H/+, Pdx1-Cre)から樹立した膵がん細胞株をナイーブマウスの皮下に同種移植し、生着した腫瘍をDay10 に摘出し(本モデルでは約200mm3 に相当)、これを膵がん術後モデルマウスとして用いる。 術前K3-SPG-ISV群とControl群の膵がん術後モデルマウスを比較し、再発腫瘍の増殖の有無と生存期間を解析した。両群とも大半は再発なく生存し、生存期間に有意差を認めなかった。 現在は、再発せず長期生存した膵がん術後モデルマウスの皮下に同じ膵がん細胞株を再移植し、ISV の有無による免疫記憶成立の違いについて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 皮下腫瘍の外科切除法を確立し、膵がん術後モデルマウスを作成した。 2. 術前K3-SPG-ISV群とControl群の膵がん術後モデルマウスを比較し、再発腫瘍の増殖の有無と生存期間を解析した。N=6で実験し、術後73日目~112日目に局所再発により1~2匹ずつ死亡したが、両群とも大半は再発なく生存し、生存期間に有意差を認めなかった。 3. 再発せず長期生存した膵がん術後モデルマウスの皮下に同じ膵がん細胞株を再移植し、ISV の有無による免疫記憶成立の違いを確認しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 膵がん術後モデルマウスの遠隔転移(リンパ節・肺・肝)の有無について肉眼的、組織学的な検討を行う。 2. 臨床応用に向けてより有効な免疫複合療法を開発する。メモリーT 細胞の誘導に重要とされるサイトカインIL-7 やIL-15、副刺激分子CD40 刺激抗体、同じく免疫記憶誘導への関与が知られる抗PD-1 抗体の併用投与を行い、K3-SPG との相乗効果を評価する。 3. 術前K3-SPG ISV 群とControl 群で、所属リンパ節、末梢血、脾臓を回収し、フローサイトメトリー解析する。TRM (tissue-resident memory T cell) [CD8+,CD69+, CD103+] 、TCM (central memory T cell) [CD8+, CCR7+, CD62L+] 、TEM(effector memory T cell) [CD8+, CCR7-, CD62L-]などのメモリーT 細胞を解析し、ISV の有無による免疫記憶誘導の質的・量的な差異を明らかにする。 4. 3.で回収した所属リンパ節、末梢血、脾臓を用いてRNA-seq 解析を行い、各臓器のISV 後の免疫状態をトランスクリプトームレベルで明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度に各種抗体試薬の購入やRNAシークエンス解析等にあてる予定。
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