2021 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の腺房細胞の形態学的変化の制御による浸潤抑制法の開発
Project/Area Number |
21K20806
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岐部 晋 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00910605)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / 腫瘍微小環境 / ADM様変化 / 癌関連線維芽細胞(CAF) / シングルセルRNAseq解析 / 腫瘍関連マクロファージ(TAM) |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は過去、膵癌の先進部で腺房-導管異形成(acinar-to-ductal metaplasia: ADM)様変化を認め、通常の膵炎となどとは異なる表現型を示し、腫瘍浸潤、線維増生に関わること、さらにADM変化が腫瘍微小環境にもかかわる可能性を報告してきた。本研究では、この機序を明らかにし、腫瘍の局所浸潤を制御するためのターゲット細胞や分子を同定することを目的としている。 免疫染色により、ADM様病変が、腫瘍先進部に存在することを確認し、さらに血管新生を血管密度で評価すると、癌部よりADM様病変で有意に血管新生が増生していることが分かった。さらに血管密度が増加すると全生存率が低下することが分かった。また、過去の研究で膵癌細胞がIL12Aを分泌し、単球細胞を微小環境にリクルートし血管新生を促進する報告があり、ADM様病変においても免疫染色で確認を行った。IL12Aの発現は癌部より亢進し、またマクロファージマーカーおよび、免疫抑制性腫瘍関連マクロファージのマーカーであるCD68、CD163の発現が亢進していた。さらに、多重免染により、ADM様病変におけるマクロファージに一致してMatrix Metalloproteinase-9(MMP9)が発現していることを確認した。 一方、Vitroにおいて、単球性白血病細胞株である、THP-1を用いて、抗腫瘍効果があるとされているM1マクロファージ、免疫抑制系マクロファージであるM2マクロファージに分化させ、M2マクロファージが血管新生を促進すること、MMP9を高発現していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADM様病変が腫瘍微小環境において、腫瘍浸潤を促進する一因として、血管新生および免疫抑制系のマクロファージに着目した。ADM病変において癌部より血管新生が促進していること、IL12Aの発現が亢進していること、免疫抑制系マクロファージの浸潤が促進していること、MMP9の発現が亢進していることを確認した。MMP9は過去、好中球が分泌し血管新生を促すと報告されている またVitroにおいて免疫抑制性マクロファージが血管新生を促進することを確認した。 これらのことから、ADM様病変が免疫抑制系のマクロファージを誘導し、IL12A、MMP9を介して血管新生に寄与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ADM様領域におけるシングルセル解析を行い、マクロファージの集団の解析や、細胞特異的な遺伝子の発現の同定、評価を行う。膵癌3D共培養モデルを用いて、局所浸潤モデルを作成し、同定した因子を阻害するような化合物やsiRNA、抗体を用いて局所浸潤の変化を検討する。 また上記の化合物等を用いて、マウスモデルでのADM様変化や局所浸潤に与える影響を検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は3D共培養や、免疫染色、FACSなどの実験に必要な、研究器材、試薬、抗体の購入、またシングルセル解析に使用予定である。
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