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2021 Fiscal Year Research-status Report

口腔細菌由来の酪酸による口腔癌の発生や進展に関する機序の解明と新規治療法の創出

Research Project

Project/Area Number 21K20807
Research InstitutionKumamoto University

Principal Investigator

永尾 優果  熊本大学, 病院, 医員 (80908773)

Project Period (FY) 2021-08-30 – 2023-03-31
Keywords口腔癌 / 口腔内細菌 / 短鎖脂肪酸
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、口腔細菌由来の酪酸による口腔癌の発生や進展に関する機序を解明し、新規治療法の創出を目指している。2021年度は口腔内環境および酪酸と口腔癌との臨床的特徴との関連性を解明することを目的とした。まず実際の口腔癌患者の唾液中の口腔細菌叢について次世代シークエンス法を用いて解析を行なった。当科では健常者の唾液の確保についてはやや難渋しており、まずは口腔癌患者の中でも初期癌患者と進行癌患者に分けて比較検討を行なった。酪酸産生菌と呼ばれている歯周病菌については優位差はつかず、癌の有無に着目し術前と術後に分けて解析を行うと、一部の菌に差を認めた。それらの菌の臨床的意義については現在検討中である。
次に実際の口腔癌患者の短鎖脂肪酸濃度について検討を行なった。口腔癌患者の唾液中の短鎖脂肪酸濃度をガスクロマトグラフ ィー質量分析にて測定し、初期癌患者、進行癌患者に分け、比較検討を行なった。有意差はついていないが、初期癌患者と比較し、進行癌患者の方が短鎖脂肪酸濃度が高い傾向にあった。口腔癌進行患者においては口腔内の短鎖脂肪酸濃度が高い傾向にあることが予想される。
本年度の研究により、口腔癌の進行と口腔内の短鎖脂肪酸が何らかの関係がある可能性が示唆された。今後はさらに臨床病理学的因子との関連性の解析や、実際の口腔癌細胞を用いた研究も進め、口腔細菌由来の短鎖脂肪酸(とくに酪酸)による口腔癌の発生や進展に関する機序を解明するためにvitro実験も進めていく予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2021年度は口腔内環境および酪酸と口腔癌との臨床的特徴との関連性を解明することを目的としていた。実際に、口腔癌患者の口腔内細菌の解析や酪酸濃度に関しては幾らかの結果を得た。しかしながら、口腔癌患者は特に進行症例において酪酸産生菌である歯周病菌が多くなると予想していたが、実際には有意差を認めなかった。口腔癌は外向性に増大する場合と潰瘍を形成し、内向性に進行する場合がある。一般には内向性の方が予後が悪く病理組織学的にも悪性度が高い場合が多い。酪酸産生菌は主に嫌気性菌であり、癌の表層より深部に存在する可能性が考えられ、In situ hybridization法等にて酪酸産生菌を染色することで酪酸産生菌の存在を確認し、深部と表層での違いを比較検討する必要がある。
また口腔内の短鎖脂肪酸濃度についても解析を行い、進行癌患者の方が初期癌患者よりも短鎖脂肪酸濃度が高い傾向にはあったが有意差までは認めておらず、サンプル数や条件等を見直し再検が必要である。以上のようにvivoでの研究成果については幾分かの成果を得たが、さらに解析が必要な結果となった。一方で、vitroに関してはすでに実験を開始しており、口腔癌細胞を酪酸処理した際の細胞特性の変化や実際の口腔癌をとりまく環境を想定した低グルコース状態や低酸素状態での細胞特性の変化についてもすでに解析を開始しており、一定の成果を得ている。
以上より、本来予定していた2021年度中に予定していたvivoでの研究成果については完成しておらず、新たな課題も見つかったが、2022年度中に行う予定のvivo研究はすでに一部結果が出ており、総じて若干の遅れにとどまっていると考える。

Strategy for Future Research Activity

まずは2021年度の課題であったvivoの研究について遂行する。
口腔癌患者の組織サンプルを用いてIn situ hybridization法等にて酪酸産生菌を染色し、酪酸産生菌の存在を確認および深部と表層での違いを比較検討を行う。その際、部位や歯周病状況など条件を検討して行う必要があると考える。また並行してvitro研究も進める。現在、口腔癌細胞を酪酸処理した際の細胞特性の変化や低グルコース状態や低酸素状態での細胞特性の変化についてはすでに解析を開始している。反復性を確認した後に、その機序についても解析を行う。
酪酸および周囲環境による遺伝子発現変化を調べるために細胞の各酪酸濃度および周囲環境下でmRNAを抽出し、RNA-seq法にて網羅的な遺伝子発現解析を行う。各処理によって変化した遺伝子を探索し、その臨床的意義について検討を行う。
次いでエピゲノム変化にも着目する。酪酸はHDAC阻害作用を持っているため、各種環境下で口腔癌細胞を酪酸処理し、タンパク質の回収を行い、口腔癌細胞のヒストンのアセチル化タンパク質の変化をウェスタンブロッド法にて解析する。更にChIP-seq法にてゲノムワイドでのヒストンアセチル化の変化を解析する。そしてヒストンアセチル化の変化と遺伝子発現の変化を比較検討し、酪酸および周囲環境による口腔癌細胞の変化を解析し、臨床的意義について検討する。
最終的には実際にPDXモデルマウスに酪酸を投与することで評価し、口腔癌の進展機構の解明および新規治療法について検討する。

Causes of Carryover

本年度は臨床データの解析をメインに研究を進めており、必要物品が予想していたよりも少なかったことが考えられる。今後、vivo実験を行うにあたり、試薬や消耗品等で多くの物品が必要と考えられるため、残額は次年度の研究活動に使用する予定である。また、vivo研究においても解析が十分ではないため物品購入や解析依頼費として必要と考える。
さらに本年度は新型コロナウイルスの影響で多くの学会がオンライン参加となった。学会旅行費に関しては使用しなかった。今年度は新型コロナウイルスの感染も落ち着いてきており、国内・海外を問わず可能であれば学会への参加を検討しており、学会旅行費としても使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2021

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 酪酸によるエピゲノム変化を介した口腔癌の細胞制御機序の解明2021

    • Author(s)
      永尾優果,廣末晃之,山本達郎,平山真弓,中元雅史,川原健太,永田将士,吉田遼司 中山秀樹
    • Organizer
      日本口腔外科学会総会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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