2022 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌の腹腔洗浄液を用いたリキッドバイオプシーによる腹膜播種への臨床的応用性の検討
Project/Area Number |
21K20823
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 和治 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (50769627)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 膵管癌 / リキッドバイオプシー / 腹腔洗浄細胞診 / precidion medicine / cell-free DNA / 腹膜転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「膵癌患者における腹腔内転移の診断や予測を、腹腔洗浄液を用いた解析で行うこと」を目的とし、東北大学大学院医学系研究科外科学病態講座消化器外科学分野で膵癌と診断され、手術を企図し腹腔内検索を行なった際に採取された腹腔洗浄液を用いてバイオマーカーの検索を行なった。 2018年度より膵癌症例の腹腔洗浄液を採取し、延べ149例の腹腔洗浄液サンプルを採取し、病理組織細胞診に用いた余剰サンプルである上精を用いて研究を行なった。腹腔洗浄液中のCEA、CA19-9の測定及びの洗浄液中に含まれる腫瘍由来DNA(cf-DNA)を膵癌の90%以上に認められるKRAS遺伝子変異をベンチマークとしリアルタイムPCRで測定し、droplet-digital PCR(ddPCR)を用いた絶対定量により存在の有無及びアレル頻度を測定した。腹腔内転移のうち、血行性転移より播種性転移により関与していると考えられる腹膜転移に着目し、同一患者の対応する血漿サンプルとの比較を行い、腹膜転移症例では血液中よりも多くの膵癌由来であるKRAS遺伝子変異が腹腔洗浄液中に含まれることが分かった。また、同様に遺伝子変異のアレル頻度も腹膜転移陽性例では陰性例と比較し腹腔洗浄液中で有意に高くなることが分かった。 また、ddPCRで定量を行なった腹腔洗浄液サンプルのうち、アレル頻度が1%以上であるサンプルに対し、次世代シークエンスを用いて遺伝子変異を同定し、KRAS遺伝子変異の他に、膵癌関連遺伝子変異であるTP53、CDKN2A、GNAS、SMAD4遺伝子変異が検出された。一部のサンプルでは対応ある血漿サンプルには検出されなかった膵癌関連遺伝子変異が検出された。 上記より腹腔洗浄液中には膵癌由来である遺伝子変異の情報を含んでおり、一部の腹膜転移サンプルでは腹腔洗浄液中にのみ膵癌関連遺伝子変異が検出され、腹膜転移に関する診断や予測への可能性を秘めたリキッドバイオプシーとしての有用性が示された。
|