2021 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の癌関連線維芽細胞(CAF)表面の糖鎖構造解析による新たなCAF機能の解明
Project/Area Number |
21K20824
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 貴寛 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (90909433)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / 癌関連線維芽細胞 / CAF / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
附属病院の手術室で摘出した臨床膵癌の手術検体10例を研究室で培養した。線維芽細胞専用の培地を用いて培養することで癌細胞を生存させず、CAFのみを培養することが可能であった。この方法で7例のCAF lineを確立することができた。そのうち、成長速度が著しく遅く実験に用いることが適切でないものを除き、4例についてhTERTを用いて不死化細胞株とした。細胞の形態とqPCRでのCAFマーカー遺伝子の発現によりCAFであることを確認した。また、先行研究で脂肪由来間葉系幹細胞がCAFに分化することが判明していたので、対照群として用いるためにこれらも用いた。先行研究と同様の方法でAD-MSCと膵癌細胞株Capan-1を2つの方法(直接共培養とトランズウェルを用いた間接共培養)で共培養した。直接共培養したものは、フローサイトメトリーを用いてCapan-1と分離し、CAFのみを抽出した(DR-CAF)。間接共培養したものは、トランズウェルから採取し用いた(TW-CAF)。 臨床検体由来のCAF、DR-CAF、TW-CAFとともに、CAFの起源であるAD-MSCをコントロールとして用いて、膜画分のタンパク抽出を行った。共同研究先の産業技術研究所の研究室で、レクチンマイクロアレイを用いて、CAF特異的な糖鎖の候補のスクリーニング検索を行った。AD-MSCとDR-CAF, TW-CAFを比較し、変化の大きなものをCAF特異的な糖鎖の候補として抽出した。そしてその候補の中から臨床検体由来のCAFに発現する糖鎖を有意な候補として位置付けた。この方法で約10個の糖鎖をCAF特異的な糖鎖の候補とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
附属病院の手術室で摘出した臨床膵癌の手術検体10例を研究室で培養した。線維芽細胞専用の培地を用いて培養することで癌細胞を生存させず、CAFのみを培養することが可能であった。この方法で7例のCAF lineを確立することができた。そのうち、成長速度が著しく遅く実験に用いることが適切でないものを除き、4例についてhTERTを用いて不死化細胞株とした。細胞の形態とqPCRでのCAFマーカー遺伝子の発現によりCAFであることを確認した。また、先行研究で脂肪由来間葉系幹細胞がCAFに分化することが判明していたので、対照群として用いるためにこれらも用いた。先行研究と同様の方法でAD-MSCと膵癌細胞株Capan-1を2つの方法(直接共培養とトランズウェルを用いた間接共培養)で共培養した。直接共培養したものは、フローサイトメトリーを用いてCapan-1と分離し、CAFのみを抽出した(DR-CAF)。間接共培養したものは、トランズウェルから採取し用いた(TW-CAF)。 臨床検体由来のCAF、DR-CAF、TW-CAFとともに、CAFの起源であるAD-MSCをコントロールとして用いて、膜画分のタンパク抽出を行った。共同研究先の産業技術研究所の研究室でレクチンマイクロアレイを用いて、CAF特異的な糖鎖の候補の検索を行った。AD-MSCとDR-CAF, TW-CAFを比較し、変化の大きなものをCAF特異的な糖鎖の候補として抽出した。そしてその候補の中から臨床検体由来のCAFに発現する糖鎖を有意な候補として位置付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのレクチンマイクロアレイを用いたスクリーニングで抽出したCAF特異的糖鎖の候補の検証を行う。具体的には、臨床膵癌組織と対になる非癌組織から作製した組織マイクロアレイ(48症例分)を用いたレクチン染色と、オルガノイドライブラリー(10例)・CAFライブラリー(10例)を用いた3次元共培養の2つの系を用いて検証を行う予定である。それぞれで糖鎖発現量の定量解析を行い、特異性の検証を行う。患者組織由来のライブラリーや組織マイクロアレイを用いることで効率的に検証可能である。 上述の3次元培養や組織レクチン染色におけるその発現パターン(発現量や癌細胞との位置関係など)からその糖鎖の機能や、新たなCAFの機能を検証する。その際、すでに手元にあるCAFのRNAシークエンスのデータや免疫染色のデータが機能推定に大いに役立つと考える。
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Causes of Carryover |
世界中での新型コロナウイルス感染症の蔓延により、オルガノイド培養に必要なマトリゲルが長期間にわたり在庫切れで購入できなかったため、実験に遅れが生じた。メーカーからの購入もようやく可能になったので、次年度で実験を進める予定である。 また、候補レクチンによる染色については、組織マイクロアレイを新たに作製するのに時間を要し、染色を進めることができていなかった。新たな組織マイクロアレイを作成したので、これを使用して次年度でレクチン染色を行う予定である。
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