2021 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞におけるセリン生合成経路を標的とした膵がん肝転移治療法開発の試み
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21K20828
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 恵介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10608532)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / 肝転移 / セリン生合成経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵がんは、様々な間質細胞と豊富な細胞外基質から構成される線維性間質を伴った腫瘍を形成し、内部に高度な低酸素・低栄養環境を生じる。膵がんは、こうした低栄養環境で生存するために、膵星細胞や神経細胞から栄養素の供給を受け(Parker & Yamamoto, Cancer Discov 2020; Banh & Yamamoto, Cell 2020)、自身の代謝を改変して適応する(Yamamoto, Nature 2020; Yamamoto, Autophagy 2020; Biancur & Yamamoto, Cell Metab 2021)。例えば、膵原発巣で最も不足しているアミノ酸であるセリンは、通常は細胞外からの取り込みが低下すると、グルコースを基質として細胞内で生合成される。申請者はこのセリン生合成経路酵素の発現がヒト膵がん切除検体と細胞株のそれぞれ約4割で喪失しており、これらセリン生合成酵素欠損膵がんは、膵原発巣内では神経細胞から放出されるセリンに依存して生存・増殖すること、神経新生の阻害により抗腫瘍効果が得られることを発見した。しかし、原発巣と腫瘍微小環境が異なる肝転移巣については、その代謝特性、特にセリン生合成酵素欠損膵がんのセリン獲得経路はこれまで不明であった。 そこで、肝転移近傍に豊富に存在する肝細胞が、転移がん細胞の代謝を支えている可能性を考えた。マウス膵がん肝転移モデルを作成し、担癌肝より肝細胞を単離、RNA-seqにて代謝遺伝子の発現を解析したところ、肝転移を有するマウスでは肝細胞においてセリン生合成酵素の発現が増加していることを見出した。さらに、単離した肝細胞を用いたウエスタンブロットにより蛋白レベルでの発現増加を確認した。また、免疫染色より、転移巣近傍の肝細胞において、特にセリン生合成酵素発現上昇が顕著であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進んでいる。現在までの知見は以下の通り:転移巣が肝細胞に誘導する代謝変化を調べるため、マウス膵がん肝転移モデルを作成し、担癌肝より肝細胞を単離、RNA-seqにて代謝遺伝子の発現を解析した。その結果、肝転移を有するマウスでは肝細胞においてセリン生合成経路酵素の発現が増加していることを見出した。単離した肝細胞を用いたウエスタンブロットを行い、この酵素が蛋白レベルでも発現増加していることを確認した。また、担癌肝の組織切片を用いて、特に転移巣近傍の肝細胞において、この酵素の発現が上昇していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
「膵がん肝転移巣では、肝細胞でのセリン生合成の増加・細胞外放出が生じ、がん細胞へセリンが供給される」という仮説を検証し、「肝細胞における(セリン)代謝改変を標的とした、膵がん肝転移治療法の開発」を目標とする。具体的には、(1)肝転移巣でのがん細胞によるセリン消費/欠乏が、近傍肝細胞でのセリン生合成増加の誘因であることを示す (2)セリン/グリシン欠乏条件で、肝細胞がセリン生合成酵素欠損膵がんの生存/増殖を支えることを示す ことを目標とする。単離肝細胞のin vitro培養、特に癌細胞との共培養を、セリン・グリシン不含培地を用いて行う。
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