2021 Fiscal Year Research-status Report
腸上皮化生に対する網羅的解析を用いた新規の胃発癌関連遺伝子異常の同定
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21K20836
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 健 京都大学, 医学研究科, 医員 (10912040)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 腸上皮化生 / 胃癌 / ゲノム解析 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
H. pylori感染を背景とした胃癌症例で、内視鏡的に切除した癌の背景粘膜を採取し上皮のみを剥離したのち、Alcian Blue染色により、化生上皮と非化生上皮を識別し、それぞれを分離した。そのうち腸上皮化生と非腸上皮化生を1腺管単位で分離し、1腺管を1サンプルとしたDNA用の検体と、複数腺管をまとめたDNA/RNA用検体とを作成した。腸上皮化生および非腸上皮化生の1腺管と複数腺管からDNAを、また腸上皮化生および非腸上皮化生の複数腺管からRNAを抽出した。特に、DNAに関しては一腺管単位で解析を行った。RNAは収量の低さから、1腺管の解析は行うことができなかった。 抽出したDNA,RNAをもとに、次世代シーケンサーを使用してDNA配列およびRNA発現量を解析した。また、得られたゲノムデータをもとにコピー数変化を算出した。これらにより、まだ症例数は少ないものの、腸上皮化生腺管は非化生腺管と比較して遺伝子変異数が非常に多く、腸上皮化生腺管は分裂を繰り返すことによりそのクローン領域を拡大していることがわかり、また腸上皮化生はおなじ症例においても非化生腺管と比較して遺伝子修復酵素の発現が低下していることが分かった。これらは、同じ炎症背景であるはずの同一症例の胃粘膜内においてもゲノム異常にヘテロ性が見られることを示しており、またその機序として、遺伝子修復酵素の機能低下が関与していること、その影響下にある腺管がクローン性に拡大していることが示唆されるという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年胃癌は減少傾向にあるが、内視鏡的粘膜下層剥離術の症例が少なくはなく、おおむね期待通りの症例数が得られているため。また、自研究室内で遺伝子解析手法が定着してきたことから安定的に解析を行えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点ではDNAおよびRNAの両方の同時解析を目指していたため、素材/回収方法の問題からRNAのクオリティが低く、確実性が低い。RNAに特化した採取方法に変更することでより信頼性の高い解析結果を得ることとする。 統計学的な解析が行えるようになるまでの症例数を蓄積する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定額を使用している
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Research Products
(2 results)