2021 Fiscal Year Research-status Report
乳がんの肺転移をモデルとした前転移ニッチ形成機構の解明
Project/Area Number |
21K20847
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
富永 香菜 順天堂大学, 医学部, 助教 (50779569)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 乳がん / 腫瘍 / 浸潤・転移 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん転移は患者の予後に大きな影響を与えるため、転移機序解明やその応用による治療法の開発は急務である。がん転移では原発巣から遠隔転移した先の臓器にて微小環境(ニッチ)が形成されることによりがん細胞の増殖が促進されているとされるが、詳細なメカニズムは不明な点が多い。そこで本研究では、乳がんの肺転移をモデルに、転移ニッチ形成に関わる細胞として肺線維芽細胞に着目し、乳がん細胞と転移巣の細胞のコミュニケーションに基づいた転移ニッチ形成機序の解明を目指す。本成果をもとに、転移ニッチ形成を標的とした新規治療薬、早期診断法の開発につなげる。 2021年度では、(1)免疫不全マウスへ乳がん細胞を移植後に微小転移が形成される時点の決定、(2)微小転移前後の組織学的な違いの検討、(3)微小転移前後の肺線維芽細胞の遺伝子発現プロファイル取得を目標とした。 具体的には、高転移乳がん細胞を免疫不全マウスへ移植し、20日後および30日後のマウスの肺を取り出した。コントロールマウス(がん細胞非移植マウス)および転移巣肺の組織切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色やがん関連線維芽細胞で発現しているタンパク質について免疫染色を行うことにより微小転移巣前後で組織学的な違いがあるのか検討した。さらに、乳がん細胞移植群および非移植群の各々の肺線維芽細胞からRNAを取り出し、共同研究先にてDNAマイクロアレイ解析を行った。この実験で得られた遺伝子発現情報を用いて、クラスター解析やGene Ontology解析などを行ったところ、乳がん細胞移植群の肺線維芽細胞において活性化しているパスウエイや鍵因子を見出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高転移乳がん細胞を免疫不全マウスへ移植後、段階的に肺を取り出してHE染色にてがん細胞の有無を確認することにより、腫瘍発生から肺転移が生じる時期を把握することができた。さらに、同モデルマウスを用いて、微小転移と転移期の各々のマウスから肺を取り出し、肺線維芽細胞のみを分取する手法を確立した。各々の肺線維芽細胞からmRNAを抽出し、共同研究先でDNAマイクロアレイを行い、転移したがん細胞の生着を促進するような働きをもつ可能性がある鍵分子を見つけることに成功した。以上から、腫瘍発生から肺転移が生じる時期の検討に時間を要したが、概ね順調に研究が進展したと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず両移植群について、特定した鍵因子のmRNA発現量をqPCRで、タンパク発現量をWestern blotにて比較する。また、マウス肺組織において、この鍵因子ががん細胞転移後に発現が亢進しているのかを確かめる。さらにマウスの正常肺線維芽細胞でこの鍵因子を過剰発現させたときに、どのようなメカニズムでがん細胞の浸潤や増殖に影響をあたえるのかin vitroで検討する予定にしている。
|
Causes of Carryover |
2021年度にDNAマイクロアレイとデータ解析を受託等で行う予定にしていたが、学内の共有機器を用いて共同研究として行うことができたため必要最低限の試薬の購入のみで実施することができた。したがって、機器使用代や受託費などの費用が未使用額として残った。未使用額については、新規に見出した転移ニッチ形成の鍵因子の解析のために新規の転移モデルマウスの作成等に使用するとともに、研究成果の発表のための学会参加費用として使用することにしたい。
|
Research Products
(1 results)