2021 Fiscal Year Research-status Report
内側前頭前野のドパミンD5受容体による衝動性制御機構の解明
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21K20856
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹森 瞳 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (20911126)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 衝動性 / ドパミン / 行動薬理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、衝動性制御の脳内メカニズムを明らかにし、衝動性抑制薬開発への糸口を見出すことである。応募者はこれまでにノルアドレナリン再取り込み阻害薬が内側前頭前野腹側部のドパミンD1様受容体(D1 or D5受容体)刺激を介して衝動性を抑制するという一見理解し難い現象を見出してきた。ドパミンD1様受容体にはドパミンD1受容体とドパミンD5受容体がある。ドパミンD5受容体が高次認知機能に果たす役割は不明な部分が多いが、前頭前野においてはドパミンD5受容体が密に発現する。そこで「内側前頭前野のドパミンD5受容体刺激によって衝動性が抑制される」を立てて、その検証を試みた。ドパミンD5受容体ノックアウトマウスにデュロキセチンを投与しても、衝動性抑制効果が生じないかを調べた。衝動性の評価には、当研究室で開発した3-選択反応時間課題を用いた。その結果、予想に反して、ドパミンD5受容体ノックアウトマウスにデュロキセチンを投与しても、衝動性抑制効果が生じる傾向にあった。この課題に関連する運動機能、認知機能、学習機能といった他の指標も、ノックアウトマウスと野生型マウスで比較したが、著明な差を認めなかった。さらに、このノックアウトマウスで、当該受容体が想定通りにノックアウトできているか確認するために、免疫組織化学的染色を試みたが、市販の抗体の中で良質なものが存在しないことがわかった。そのため、他の手段を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想に反する結果だったものの、予定していた実験はおおむね済ませたため。
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Strategy for Future Research Activity |
内側前頭前野でのみD5受容体が衝動性に重要な役割を果たす可能性を考え、Creタンパク依存的にDNA二重鎖切断酵素Cas9を発現するマウス(Jackson Laboratory, No:024857)の内側前頭前野に、CaMKIIαかGADのプロモーター依存的にCreおよびsgRNAを発現するウイルスを注入して内側前頭前野の錐体細胞もしくは介在神経細胞特異的D5受容体ノックアウトマウスを作成する。なお、CRISPR/Cas9法によるドパミンD5受容体遺伝子ノックアウトが難航した場合には、効果はCas9より劣るが既に確立されているRNA干渉法による遺伝子発現抑制法に切り替える予定である。
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Causes of Carryover |
論文の掲載料を年度末で支払えなかったため
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