2021 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸代謝産物によるピルビン酸代謝制御機構の解明
Project/Area Number |
21K20867
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
西 清人 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (30749362)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | アミノ酸 / ピルビン酸 / 糖新生 / MPC / BCAA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、肥満や心疾患で分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝障害が生じ、BCAAやその代謝産物である分岐鎖αケト酸(BCKA)が血中・組織中に貯留することで、病態に関与することが明らかになってきた。一方、ミトコンドリアピルビン酸担体(MPC)はピルビン酸輸送を介してミトコンドリア内外のエネルギー代謝を制御する鍵分子だが、その活性調整機構はよくわかっていない。 申請者は、BCAA代謝障害モデルであるPPM1K欠損マウス(以下KO)においてピルビン酸負荷後の血糖上昇が軽微なこと、BCAA代謝産物であるBCKAが肝細胞において糖新生を抑制することから本研究を着想し、これまでの解析によって以下のような研究成果を得た。 (1)14Cでラベルしたピルビン酸の取り込みを測定することで、ミトコンドリアピルビン酸担体(MPC)の活性を測定し、BCKAが濃度依存的にMPCを阻害することを明らかにした。さらに、ピルビン酸濃度を変化させても、BCKAによるMPC阻害率は変化しないため、BCKAによるMPC阻害は非競合阻害であることが示唆された。一方、BCKAの存在下ではプロテアーゼによるMPCの分解が遅延した。以上の結果から、BCKAがMPCと結合し、アロステリックにMPCの活性を制御する可能性が示唆された。 (2)MPC阻害薬の存在下では、BCKAによる糖新生抑制効果が消失したため、BCKAがMPCを介して糖新生を抑制していることが示唆された。 (3)これまで用いていたマウス初代培養肝細胞に加えて、ヒト肝細胞株においてもBCKAによる糖新生抑制に矛盾しない実験結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は、(A)BCKAによるMPC阻害の分子機構の解明、(B)BCKAによる糖新生抑制がMPC阻害を介したものかの解明、を目的としている。 (A)については、【研究実績の概要】の(1)に示す様な成果を得た。 (B)については、【研究実績の概要】の(2)に示す様な成果を得た。 また、【研究実績の概要】の(3)に示すように、マウス初代培養肝細胞に加えてヒト肝細胞株でも実験系を構築することができた。細胞株の利用によって、遺伝子操作がより簡便になるため、研究の迅速化が期待できる。 以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本申請の目的は(A)BCKAによるMPC阻害の分子機構の解明、(B)BCKAによる糖新生抑制がMPC阻害を介したものかの解明、である。 (A)については、MPCのどの部位が機能に重要であるか、など詳細な分子機構を明らかにすることを目指す。 (B)については、MPCやBCAT(BCKAとBCAAの変換を担う酵素であり、肝細胞に欠失している)の過剰発現を行い、MPC阻害の意義について明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のために、一部の学会参加がin personでなくonlineとなったため次年度使用額が生じた。 実験試薬や消耗品の価格は、円安の影響などもあって申請時よりも高額になっていることがある。そのため、次年度使用額については物品費にあてる予定である。
|