2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20875
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
古宮 裕泰 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (90794553)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ミクログリア / マクロファージ / 筋萎縮性側索硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行性かつ不可逆な神経細胞の変性・脱落を特徴とした難病である。この疾患病態として、従来は神経細胞自体の機能不全や細胞死のみが注目されてきたが、近年、発生過程で全身に分布し各臓器の自然免疫と恒常性のセンサーを担う単球系細胞が、神経系の恒常性破綻に伴って活性化や浸潤を来たすことで、疾患が重篤化することが判明しつつある。その一方で、外傷や感染(含む・新型コロナ罹患)などの全身炎症に伴って、病態が加速度的に進行することが知られているが、その機序は未解明である。 そこで本研究では、神経系・免疫系・血液系の3臓器連関の観点から、特に3者連関の担い手である単球系細胞に注目して、全身炎症によるALS病勢促進の機序解明を目指す。 我々が作出した、組織マクロファージと循環・浸潤マクロファージを各々緑色と赤色に生体弁別可能なALSモデルマウスを用いて、細菌感染やウイルス感染を模した全身炎症を惹起し、各病期で生体分取した単球系細胞の網羅的プロファイル解析を行うことで、疾患調節因子の抽出・同定を行い、ALSの新規病勢バイオマーカーや新規治療法の創出への基盤構築を目指す。以上の成果から抽出・同定されたALSの疾患調節因子については、横浜市立大学附属病院脳神経内科で集積中のALS患者由来の生体試料(患者剖検組織、脳脊髄液、血液など)でも検証を行い、ALSの先制治療や根本治療に繋がりうる新規病勢バイオマーカーや新規治療法の創出への基盤構築を目指す。 本研究成果により、同じく感染を契機に進行が加速することが知られているアルツハイマー病をはじめとする他の神経変性疾患全般を「全身病」として捉える疾患理解のパラダイムシフトを形成することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、我々が作出した、組織マクロファージと循環・浸潤マクロファージを各々緑色と赤色に生体弁別可能なALSモデルマウスに、リポ多糖あるいはpoly(I:C)を腹腔内へ反復投与することで細菌感染あるいはウイルス感染による全身炎症を模したモデル作成した。反復炎症刺激の閾値検討を通じて条件設定は完了しており、生存期間解析、運動機能解析に関してもすでに開始し、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
全身炎症を模した、ALSモデルマウスを利用し、神経系・免疫系・血液系の単球系細胞を、FACSを用いた脳脊髄組織・脳脊髄液・脾臓・末梢血の単球系細胞の分取(緑色細胞あるいは赤色細胞)し、各病期(早期、中期、後期、末期)において評価を行う。分取した単球系細胞に対して、生体培養、組織学的解析、Luminex解析、質量分析、scRNAseqなどを用いて、網羅的なプロファイル解析を行い、疾患調節因子の抽出・同定を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延下のため、今年度に予定されていた消耗品の納入が遅延したため。 納期は令和4年度早々の見込みであり、繰越し分については使用予定である。
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