2022 Fiscal Year Research-status Report
血液細胞の後天的Y染色体喪失によって心不全が進行するメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K20879
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐野 宗一 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (80647884)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | Loss of Y chromosome / クローン性造血 / 心不全 / UKバイオバンク / 動物実験 / CRISPR/Cas9 / 心臓マクロファージ / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
男性の加齢にともなって血液細胞からY染色体が失われる後天的Y染色体モザイク(mLOY)は、アルツハイマーや固形がんといった加齢性疾患と関連するとされている。また、私たちの研究では、mLOYを持つ男性は心不全などの心血管疾患の予後が悪いことも判明している。 そこで私たちは、CRISPR/Cas9システムを用いてY染色体を失ったマウス(mLOYマウス)を作製し、心不全モデル(大動脈縮窄術)での表現型を解析した。その結果、mLOYマウスでは心不全が悪化しやすいことが明らかとなった。さらに解析をするめたところ、心不全となったmLOYマウスの心臓では、対照群の心臓に比べて、心臓線維芽細胞が増殖し、線維化がより進行していることが明らかになった。mLOYにおける心臓線維芽細胞はY染色体を保持しており、その働きは対照群と差異がないはずであるため、mLOYマウスの心臓における過度の線維化は、Y染色体を持たない血液細胞が線維芽細胞に影響を与えていると考えられた。そこで、シングルセルRNAシーケンシングにて解析したところ、Y染色体を失った心臓マクロファージが線維化を引き起こす性質が強いことが分かりました。そして、これらのマクロファージはTGFbなど線維化を促進する物質を多く産生していることが明らかとなったため、TGFbの働きを抑える中和抗体を投与したところ、mLOYマウスの心不全悪化の表現型が顕著に改善した。 これらの結果から、mLOYが心不全の予後を悪化させ、心臓の線維化を進行させるという因果関係が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究申請における内容が完遂されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究で、mLOYが心不全を促進するメカニズムをさらに詳しく解析し、新たな治療法の開発につなげることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にて病院での病棟管理など医療業務時間が想定より多くなり、研究活動への時間割り当てが減ったため、計画通りに実験を進めることができず、計画通 りの執行が出来なかった。今年度は国立循環器病研究センターに移籍し、研究業務に専念して計画の遅れを取り戻す予定である。
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