2021 Fiscal Year Research-status Report
急性移植片対宿主病における腸管上皮細胞再生メカニズムの解明
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21K20885
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Medical Center (Clinical Institute) |
Principal Investigator |
高嶋 秀一郎 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 血液内科医師 (70622116)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | GVHD / 同種造血幹細胞移植 / 腸管オルガノイド / インターフェロンガンマ / MYC |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスを用いた実験結果に基づき、インターフェロンガンマ(IFNg)が腸管上皮細胞の増殖を刺激する効果についてヒト検体で検証した。腸管上皮細胞を人工的に培養した腸管オルガノイドに低用量のIFNgを加えたところ、何も加えないコントロールと比較して有意に個々のオルガノイドのサイズが増大し、IFNgによる上皮細胞の増殖促進効果が示された。我々は以前に高用量のIFNgは腸管上皮細胞に傷害活性を持ち、腸幹細胞のアポトーシス誘導を介してオルガノイドの発育抑制をもたらすことを報告した。興味深いことに低用量のIFNgを加えた場合、生存オルガノイドの数もわずかながら増加しており、低用量のIFNgによる増殖刺激効果は高用量の傷害活性とは別のメカニズムによることが示唆された。 また、我々はマウス腸管オルガノイドでの実験でIFNgによる腸幹細胞の増殖刺激効果は腸幹細胞でのMyc遺伝子の発現を介したものであることを発見した。同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)ではIFNgが重要なエフェクター分子の役割を果たす。GVHDを発症したマウスでは腸管上皮細胞の増殖亢進がみられるが、ここにIFNgによるMyc遺伝子の発現変化が関与しているかを検証した。GVHDを発症したマウスから小腸組織を取り出し、Myc遺伝子のコードするc-Mycタンパクの免疫組織化学染色を行ったところ、何の処置もしていないNaiveマウスやGVHDを発症しない同系移植後のマウスと比較して上皮細胞の増殖が盛んな陰窩領域にc-Mycの発現向上を認めた。これは同種移植後の腸管上皮細胞の増殖亢進と一致してc-Myc遺伝子の発現向上が見られることを示し、これらの関連性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で検証すべき仮説として設定したヒト腸管上皮細胞に対するIFNgの増殖刺激効果を明らかにすることができた。この成果を元にそのメカニズム解析に実験を進めることができ、今後の成果が期待できる。また、GVHD発症マウスの腸管上皮、具体的には細胞増殖が盛んな陰窩領域にc-Mycの発現亢進を認めた。すでに先行研究ではGVHD発症マウスでみられる腸管上皮細胞の増殖亢進はIFNgに依存することが分かっており、IFNgとMycそして腸管上皮細胞の増殖について生体内での関連性が示唆される。マウス移植モデルで選択的Myc阻害剤を投与するなどしてこの具体的な関連性が明らかになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
IFNgが腸管上皮細胞に増殖活性をもつことがヒトでも判明したことを踏まえ、そのメカニズムの解明を目指す。MYC遺伝子の活性化を介した増殖促進のメカニズムがマウスとヒトで共通であるという仮説を立て、その検証を行う。具体的には腸管オルガノイドにヒトIFNgを加えたときのMYCの発現をreal-time PCR法やWestern Blotting法を用いて評価する。また選択的MYC阻害剤がIFNgによる腸管上皮の増殖促進に与える影響を検証する。 マウス同種移植モデルを用いてGVHD発症時の陰窩領域でのc-Mycの発現向上と細胞増殖の関連についてさらに検証を進める。具体的には移植したマウスに選択的MYC阻害剤である10058-F4を全身投与し、GVHDにおける上皮細胞の増殖・再生に対する抑制効果を評価する。また、あわせてGVHD生存に対する影響も評価してマウス生体内でのMyc活性がGVHD生存に与える影響も評価する。
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Causes of Carryover |
本研究課題については研究費の交付からの日数が浅く、使用期限の関係から他の研究費助成を優先して使用しため次年度使用額が生じた。次年度については次年度使用額の使用を見込んでマウスの購入や維持、研究試薬の購入などを計画しており、2年間を通して予定通りの研究費を要する見込みである。
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[Presentation] Immune-Mediated Reprogramming of Intestinal Stem Cells Drives STAT1-Dependent Myc Expression and Epithelial Regeneration in GI-Gvhd2021
Author(s)
Shuichiro Takashima, Roshan Sharma, Anastasiya Egorova, Jason Kuttiyara, Takahiro Ito, Winston Chang, Suze A Jansen, Chen Liu, Caroline Lindemans, Linas Mazutis, Nicolas Robine and Alan M Hanash
Organizer
63rd ASH Annual Meeting and Exposition
Int'l Joint Research
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[Presentation] Corticosteroid Treatment Impairs Epithelial Regeneration, Limiting Intestinal Recovery in Experimental Graft Vs Host Disease2021
Author(s)
Viktor Arnhold, Suze A Jansen, Winston Chang, Govindarajan Thangavelu, Paola Vinci, Shuichiro Takashima, Anastasiya Egorova, Jason Kuttiyara, Marliek van Hoesel, Chen Liu, Marco Calafiore, Bruce R. Blazar, Caroline Lindemans and Alan M Hanash
Organizer
63rd ASH Annual Meeting and Exposition
Int'l Joint Research