2021 Fiscal Year Research-status Report
単一心筋細胞伸展システムを駆使したSGLT2阻害薬の心不全改善メカニズムの探索
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21K20886
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
千葉 弓子 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70835777)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | SGLT2 / ROS / SMIT1 / NOX2 / 心不全 / 機械的刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋への機械的刺激により発生する過剰なROSは心不全発症の要因の一つと言われている。心筋細胞を急性伸展刺激することにより、ROS産生の上昇がみられることが知られているが、これまでの研究により、慢性心不全の治療薬であるSGLT2阻害薬を投与することで急性伸展刺激誘発性ROS産生が抑制されることを発見した。 心筋細胞にSGLT2は発現していないことが知られている。そこで、どのような分子メカニズムでSGLT2阻害薬が急性伸展刺激誘発性ROS産生を抑制したのかを探索したところ、SGLTファミリーの一つであるSMIT1(sodium myo-inositol transporter 1)の可能性が示唆された。野生型マウスの心筋細胞にSMIT1の輸送基質であるmyo-inositolを急性に添加し、SMIT1を活性させると、ただちにROS産生の上昇が観察された。このことから、SMIT1が急性伸展刺激によるROS産生に関与していることが考えられる。 また、高血糖時にはSMIT1の活性が上昇し、NOX2(NADPH oxidase 2)由来のROS産生を誘導することが知られている。NOX2欠損マウスの心筋細胞を用いて同様に、myo-inositolを急性に添加すると、野生型マウスの心筋で見られていたROS産生が抑制された。 以上の結果より、急性伸展刺激によるROS産生はSMIT1を介しており、SGLT2阻害薬はSMIT1の活性を阻害することで急性伸展刺激誘発性ROS産生を抑制することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の前半の目的である「SGLT2阻害薬が伸展刺激誘発性ROS産生に及ぼす影響」を明らかにすることができ、なおかつ後半の目的である薬効ターゲットの候補を特定することができたため、研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓において急性伸展刺激誘発性ROS産生に関与しているSMIT1を心臓特異的に欠損させたマウスを作製し、それを用いて解析を推進していく予定である。具体的には、 ①心臓特異的SMIT1欠損マウスに横大動脈狭窄術を行い、心不全を誘導させ、SMIT1を欠損することによる心肥大応答から心不全誘導効果を経時的に観察する。 ②SMIT1欠損することによるROS産生関連及び心筋リモデリングや心不全誘導関連遺伝子の発現を解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は研究室にある試薬や機械を使っての実験が多かったため、助成金をあまり使用せず研究ができた。 次年度の助成金は遺伝子改変マウスの作製や遠心機の購入に使用する予定である。
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