2021 Fiscal Year Research-status Report
抗腫瘍薬性心不全におけるRNA制御機構の意義の解明
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21K20889
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 輝紀 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (30733422)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | Apelin / APJ / CCR4-NOT複合体 / CNOT3 / mRNA分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNA発現制御が心機能調節に重要な役割を担っていることをこれまでに見出してきたことから、マウス不全心におけるCCR4-NOT複合体の標的遺伝子の探索を行った。まず、圧負荷(TAC)により作製したマウス肥大心の組織から調製したライセートに対し、抗マウスCnot3-IgG抗体を用いてRNA免疫沈降(RIP)を行った。そのRNAサンプルを網羅的に解析(RIP-seq)したところ、数多くの遺伝子が検出されたなかで、興味深いことにAPJ受容体mRNAが検出された。すなわち、CCR4-NOT複合体の脱アデニル化を介してAPJ受容体mRNAの発現を制御している可能性が示唆された。Apelin-APJシグナルは強力な内因性心機能調節機構であることから、今後の解析の軸になる知見のひとつと考えられる。 心筋細胞レベルでの解析を行うにあたって、これまでにマウス胎児心の単離心筋細胞を利用していたが、胎児心においては心臓発生に関与した遺伝子発現が多いことから今後作製する癌モデルの解析には適当ではなく、抗腫瘍薬による心機能障害は成体における実験を予定していること、そして癌治療の多くは成人に対して行われるものであることを踏まえ、成体マウス心臓から心筋細胞を順行性のコラゲナーゼ灌流により単離する手法を確立した。 さらに、mRNAの3’-UTR(非翻訳領域)に含まれる制御情報のうち、AU-rich element(ARE)はmRNAの不安定性に関わる配列であり、RNA結合蛋白を介してCCR4-NOTによる制御を受けることが知られている。RNA-seqで得られた心不全により変動する遺伝子群ならびにRIP-seqにより検出されたCCR4-NOT標的を含むmRNAのリストについて、データベースを利用したin silicoの解析によりAREを有する遺伝子群、すなわちCCR4-NOTの標的候補遺伝子を抽出した。これをもとに心筋細胞の実験系で詳細なメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スタート支援課題開始後半年間においては、in silicoの解析や、単離心筋細胞の方法確立に時間を費やしたため、当初予定していた疾患マウスモデルの作製およびその解析に時間を費やせなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備データから、抗腫瘍薬とくにドキソルビシンによる心筋障害性は認められており、その用量や再現性を確認することで疾患モデルを確立していく。また、これまでの研究によって樹立した心筋細胞単離の手法を用いて、薬剤性に機能低下させたマウス心臓から心筋細胞を単離し、健常マウス心筋細胞と比較、解析することでアドリアマイシン心筋症の発症の機序を解明することを予定している。
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Causes of Carryover |
スタート支援課題開始後半年間においては、in silicoの解析や、単離心筋細胞の方法確立に時間を費やしたため、当初予定していたin vivo実験やその解析に使用する試薬に必要な費用を使用しなかったためであるが、前述のような今後の実験において使用していく予定である。
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