2021 Fiscal Year Research-status Report
T細胞Secretome解析を用いた全身性エリテマトーデスの病態制御機構の解明
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21K20905
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
梅田 雅孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (20750053)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / T細胞 / メタロプロテイナーゼ / Secretome解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は①自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)患者T細胞に特異的に認められる細胞表面および細胞外蛋白の環境変化を新たに確立したSecretome解析を用いて網羅的に解析すること、及び、②これら新規に同定された蛋白の役割もしくは同蛋白を分解や切断するメタロプロテイナーゼなどの因子を同定することで新たなSLE病態制御機構を明らかにすることとしている。本研究はSecretomeのSLEにおける特異的な異常を検出することで、まだ知られていないT細胞機能の制御機構の解明を目指している。これらが明らかになれば,SLEの新たな病態制御因子の発見ならびにそれを用いた治療法に繋がる。よって、本研究は既存の検査・治療法では解決できないSLE診療の諸問題に多大な利益をもたらす可能性を秘めていると考えられる。 後述の通り、Secretome解析については、COVID-19流行下における蛋白精製カラムの供給遅延の問題で、解析が行えていない。しかし、メタロプロテイナーゼとT細胞機能に関わる成果として、SLE患者由来のCD4+T細胞において発現が上昇しているメタロプロテイナーゼ「X」をrPCRで同定している。今後、同分子のTh17細胞における役割を解析する予定としている。 またループス腎炎中の腎組織中のa disintegrin and metalloproteinases 9 (ADAM9)の発現やTGF-β 1の活性化、繊維化への影響に関して検討した研究を並行して行っており、2021年度中に新たにループス腎炎患者由来の尿検体中のADAM9濃度が上昇していることをELISAにより解明した。これらの結果は日本リウマチ学会・米国リウマチ学会で口演での発表を行い、現在論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の根幹を成すSecretome解析については、COVID-19流行下における蛋白精製カラムの供給遅延の問題で物品が到着したのが2021年度末となった。その為、Secretome解析が行えていない。現在、全ての物品が揃ったためコンディショニングを開始している。 メタロプロテイナーゼに関わる研究としてSLE患者由来のCD4+T細胞においてmRNA発現が上昇しているメタロプロテイナーゼ「X」をrPCRで同定した。メタロプロテイナーゼXは既にTh17分化細胞でその発現が上昇していることを示している。今後、CRISPR/Cas9を用いてヒトprimary CD4 T細胞において同分子のノックアウトを行い、Th17細胞における役割を解析する予定としている。 また前述の通り、ループス腎炎におけるメタロプロテイナーゼの役割に関する研究が進行している。 予期せぬ物品の供給の問題で年度内の目標であるSecretome解析による新規SLE病態制御因子の同定には至っていないが、メタロプロテイナーゼに関する研究は進捗が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
蛋白精製カラムを含むSecretome解析に必要な物品は2021年度予算で全て賄われており、コンディショニングが完了次第、SLE患者由来のCD4 T細胞を用いたSecretome解析を行う。同解析によりSLE患者においてCD4+T細胞からの分泌が増加もしくは低下している蛋白を同定する。これらの蛋白のうち、SLEの病態に関与することが報告されている既知の分子を除いたものをリスト化する。これらの分子の培養上清中の濃度を、ELISAやWestern blotを用いて、Validationを行う。上記解析で同定された分子、もしくはその分子を細胞正面から切断するもしくは分泌を促進する分子のT細胞機能への役割を明らかにする。 CRISPR/Cas9システムを用いてPrimary CD4+T細胞において当該分子をノックダウンさせる、もしくはoverexpression vectorを用いて強制発現させる。または同分子のrecombinant proteinを用いた共培養を行う。これらの条件下によりCD4+T細胞の分化能の変化(Th1,Th17,Tregなど)やサイトカイン産生能、増殖能、および生存率などの機能変化を評価する。機能に変化があったものに関しては、同条件下での細胞内シグナルや転写因子の変化など、メカニズムの解明も行う。 さらにin vivoにおける同定された分子の生体内での役割を明らかにするため、自己免疫疾患モデルを用いた解析も行う予定とする。 物品の供給の問題で遅延が生じているが研究計画は予定のものを遂行する方針としている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:購入予定であったCD4細胞分離磁気 ビーズは既存のものを使用できたため。 使用計画:CD4細胞分離磁気 ビーズは頻回に利用する予定の試薬であり、次年度に繰越した予算を用いて購入する予定とする。
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