2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性炎症性気道疾患における新規バイオマーカーの多面的検討
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21K20916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 健介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50910759)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ACO / COPD / 気管支喘息 / バイオマーカー / NGAL / YKL-40 / sRAGE / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では約20-50%に気管支喘息を合併すると報告され、喘息―COPDオーバーラップ(ACO)として近年注目を集めている。喘息の合併がないCOPDと比較してACOは臨床経過や治療方針が異なるため、ACOの診断的バイオマーカーの確立が重要である。また、ACOの分子病態も十分に解明されておらず、さらなる研究が急務である。 申請者は植物由来システインプロテアーゼを用い、ACOの病態を良好に再現するマウスモデルを既に樹立して報告している。このモデルにおいて好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)が臨床報告と同様にACOの病態を反映するバイオマーカーとなりうることも既に確認していた。 本年度、本研究ではまず準備段階として、ブタ膵臓エラスターゼを用いたCOPDマウスモデル、コナヒョウヒダニを用いた喘息マウスモデル、およびパパインを用いたACOマウスモデルについて、それぞれの特徴を比較した。そして、それぞれのモデルが各疾患の臨床的特徴をよく反映したものであることを確認した。 さらにACOに特徴的な分子病態解明のため、アレルギー性気道炎症の起点となるインターロイキン-33の産生細胞として知られる2型肺胞上皮に着目し、上記の各モデルマウスから同細胞を単離してRNA-seq解析およびシングルセルRNA-seq解析を施行した。 同解析では、ACOマウスモデルの2型肺胞上皮はCOPDモデルや喘息モデルにおけるその特徴を併せ持つものの、いくつかの分子はACOモデルで特異的に発現が亢進していることが認められた。これらの分子はACOの病態を特徴づけるマーカーになりうると考えられ、RNAscopeによる局在分析やELISAやウェスタンブロッティングによるタンパク発現解析を進めていく。さらに、最終的にはヒト臨床検体の解析を通じて、バイオマーカーとしての臨床的有用性を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行状況により、実験資材の搬入やシングルセルRNA-seqのシークエンシング外部委託作業が遅れるなどしたが、概ね計画した通りに実験計画を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
ACOのバイオマーカーとして既に有用性が期待されているNGALおよびキチナーゼ様タンパク(YKL-40)、また我々が既に注目している可溶性終末糖化産物受容体(sRAGE)を中心に、これらの産生細胞・産生機序に関する検討を継続する。 また、マウス2型肺胞上皮細胞におけるシングルセル解析によって見出されたACO特異的に発現が亢進している遺伝子につき解析を進めて、さらなるバイオマーカー候補の探索を行う。 最終的にはヒト臨床検体の解析を通じて、バイオマーカーとしての臨床的有用性を検討していく。
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Causes of Carryover |
所属研究室で保有する試薬の残りなどを用いることにより、新規購入を行わなくとも遂行できる実験が予定よりも多かったため、次年度使用額が生じた。これらの経費は合わせてシングルセルRNA-seq解析やRNAscopeなどの解析費用や試薬購入費、論文校正・投稿費用として使用する予定である。
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