2021 Fiscal Year Research-status Report
難治性血管疾患の病態多様性メカニズムにおける遺伝子変異と後天的要因の意義
Project/Area Number |
21K20928
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
垣花 優希 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (40910534)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝性出血性末梢血管拡張症 / ALK1シグナル / ACVRL1 / Endoglin |
Outline of Annual Research Achievements |
ACVRL1は遺伝性出血性末梢血管拡張症の責任遺伝子として知られている。ACVRL1遺伝子変異によるアミノ酸置換は特定のドメインではなく受容体構造全体に幅広く存在するが、変異の違いと受容体機能・血管病態との関係は不明である。また、遺伝性出血性末梢血管拡張症には後天的要因も深く関わるとされているが、血管形成の異常メカニズムや発症時期・重症度への関与は不明である。本研究では、遺伝性出血性末梢血管拡張症の病態多様性メカニズムの理解に向けて、遺伝子変異と受容体機能の関連解析、遺伝子変異と血管形成異常の関連解析、後天的要因のシグナル伝達への影響の解析から、病態多様性の機序を明らかにすることを目的としている。 遺伝性出血性末梢血管拡張症データベースに存在するミスセンス変異のうち、in silico解析で分子機能の変化が確定的でない変異を選抜した。BMP9刺激に対するSMAD依存的な転写調節活性を調べた結果、野生型と比べて変異体では活性が大きく低下することが明らかとなった。また、多くの変異体でBMP9刺激によるSMADリン酸化が低下することも示された。ACVRL1の複合体形成に対して変異が及ぼす影響を明らかにするために、コファクターであるエンドグリンとの相互作用について調べた。その結果、野生型ACVRL1ではエンドグリンとの共発現で転写活性が増加したのに対し、多くの変異体では増加しないことがわかった。さらに、上記の解析から、活性低下の程度が変異体間で異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACVRL1変異体の機能解析から、多くの変異体では活性が異常となっていることを見出すことができた。さらに、変異の違いにより分子機能が多様となる可能性を見出した。これにより、遺伝性出血性末梢血管拡張症の病態解明に向けて、ミスセンス変異体の機能解析が重要となることが示唆された。以上から、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、ACVRL1変異体の機能解析を進める。SMADリン酸化等の複数の解析において、野生型と同様な挙動を示す変異も存在しており、これまで考えられていたようなシグナル伝達系の低下だけでは説明出来ない機能低下・発症メカニズムの存在も示唆された。そのため、SMAD非依存経路も含めて患者変異体の分子機能解析を進める予定である。さらに、後天的要因がBMP9-ALK1シグナルに及ぼす影響についても解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画が多少前後し、今年度は変異体の機能解析を主に行なったため、次年度使用額が生じた。 全体の研究計画は大きく変わっていないので、次年度の物品費として使用する予定である。
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