2022 Fiscal Year Annual Research Report
屈筋腱損傷における治癒メカニズムの解明と新規治療法の開発
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21K20943
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩永 康秀 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (80906610)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 腱 / ハイドロゲル / 治癒過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
腱損傷はスポーツ活動のみならず予期せぬ怪我や事故などでも生じ、幅広い年齢層で問題となる運動器疾患である。現在では腱縫合法やリハビリテーションが改良され、術後成績は改善傾向にあるものの、術後可動域制限などの後遺症によるQOLの低下は喫緊の課題である。そこで本研究では、腱損傷の治癒メカニズムを遺伝子改変ラットにより明らかにし、腱の治癒を最適化する手法の開発を目指した。研究に先立ち、屈筋腱の治癒過程を調査するため、ラット足底の屈筋腱切断モデルを作成した。このモデルを用いて、Scx-GFPラットでの屈筋腱の治癒過程を調査した。その結果、術後2週目頃より腱周囲組織であるパラテノンやエピテノンからScx陽性細胞が増殖し、腱の治癒過程に寄与していることが分かった。また、腱修復の最適化を図るため、ハイドロゲルで被覆することで腱外の細胞を排除した環境を作成し、同様に腱の治癒過程を評価した。ここで使用するハイドロゲルは、工学系研究科で発明されたTetra-PEGゲルを使用しており、ゲル化時間、ゲル強度、など生体内での至適条件を決定した。その結果、ハイドロゲルで被覆した群では、周囲組織からの線維芽細胞の侵入を防ぎ、癒着は起こらない状態で治癒が完了した。また、ハイドロゲルで修復した腱組織は、腱周囲組織からの細胞増殖が顕著であり、生理食塩水のみのコントロール群と比較し、細胞増殖は腱周辺組織に限局していた。腱損傷後から3週間にかけて、時系列的に遺伝子発現を比較したところ、コントロール群では術後1週間目がコラーゲン合成がピークであったのに対し、ハイドロゲル群では1週目から3週目にかけて増加傾向がみられた。本研究により、ハイドロゲルで被覆することで、癒着なく腱の治癒が可能であると考えられた。
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