2022 Fiscal Year Research-status Report
Probioticsによる腫瘍微小環境改変がもたらす膵癌免疫療法の新展開
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21K20957
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
吉村 知紘 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (70908764)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 膵腺癌 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵腺癌免疫治療の効果が限定的である要因として、腫瘍微小環境(Tumor microenvironment, TME)における抗腫瘍効果を担う腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes: CTL)の欠如や、免疫抑制性の骨髄細胞を含む豊富な間質の存在が挙げられる。このような免疫抑制状態となっている腫瘍微小環境(Cold TME)において、腫瘍免疫を成立させるには、免疫原性の高いHot TMEに改変する必要がある。この点において、腸内細菌叢とTMEの関連の検討を開始した。これまでに、難治癌である膵腺癌においても、腸内フローラがTMEと関連していることが示唆されている。そこで、難治性の膵腺癌においても、Probioticsを用いた腸内フローラの改変によりTMEをHot tumorにすることができ、その結果としてImmune checkpoint inhibitors (ICIs)の治療効果を増強できるという仮説を構築した。 また、膵癌は、切除を行っても再発率が高く予後が不良である。予後改善のため、切除術に加えて化学治療を併用することが試みられ、その有用性が確立されてきた。しかし、化学療法による副作用として腸粘膜の障害が起こり、また、化学療法の副作用で有熱性好中球減少が発生すると、抗菌薬が投与される。その結果、腸内細菌も死滅・減少し、さらに腸内環境が悪化してバリア機能が低下するの現象が引き起こされる。しかし、化学療法が腸内細菌叢に及ぼす影響および化学療法による腸内細菌叢の変化、さらにはTME、tumor microbiomeに与える影響、腸内細菌叢との関連性はいまだ不明である。 膵腺癌患者に対してProbioticsを用いた介入による腸内細菌叢の構成、多様性の変化および膵腺癌TMEの免疫学的解析を前提に腸内細菌とTMEとの関連性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵腺癌の疫学,病理組織学的特徴とその病理診断手法(切片の作製と診断),浸潤・転移・予後との関連についての研究を開始し、当施設における膵癌患者のデータベースを作成した。また、膵腺癌患者に対して糞便を採取し、16SrRNAメタ解析(細菌叢解析)を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
膵腺癌患者の糞便の採取を継続して、化学療法前後における細菌固有に存在する16SrRNAのメタ解析(細菌叢解析)を行うことで、化学療法が腸内細菌叢および腫瘍微小環境に及ぼす影響を詳細に解明する。今回の化学療法による腸内細菌叢の変化の検討結果から、腸内細菌叢と免疫環境の関わりを明らかにして、膵腺癌治療におけるプロバイオテックスあるいはシンバイオテックス投与の必要性を検討する。
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Causes of Carryover |
症例集積を継続して解析を行うため。引き続き検体の採取、解析に対して使用する。
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