2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K20973
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
磯谷 正彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (40906541)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 腎結石 / 腸内細菌叢 / 16S rRNA / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまでモデルマウスを用いてメタボリックシンドローム(MetS)が腎結石形成を促進することを発見し、「腎結石はMetSの一疾患である」とする概念を確立した。一方で、ヒトの腸内には約1000種類、100兆個を超える腸内細菌が存在し、複雑な生態系を形成している。腸内細菌叢は、宿主の食生活を含む生活習慣に影響を受け、宿主生体機能の恒常性の維持に関係している。そして動脈硬化、肥満などとの関与が報告されている。 そこで本研究では腎結石形成において腸内細菌叢が関係している可能性に着目し、結石形成と腸内細菌叢の関与と、その制御による腎結石の新規治療法の開発を試みる。 研究1としてヒトにおける結石患者と非結石患者の腸内細菌叢の解析を行う。施設内倫理委員会の承認を得て、腎結石を繰り返す患者(30人)、健常者(30人)の便を前向きに解析する。また、血液、24時間尿、生活習慣などを解析する。腸内細菌叢の同定は16S rRNA遺伝子、ショットガンシークエンスで行い、代謝産物は有機酸の定量分析で行う。 研究2として腸内細菌叢、代謝産物と腎結石形成の関連性の解明を行う。5週齢のC57/BL6Jマウスを用いてシュウ酸前駆物質であるグリオキシル酸(GOX) 80mg/kgを6日間連続で腹腔内投与し、尿路結石を形成させる。研究1で得られえた代謝産物と経口投与する群と投与しない群を比較する。 研究3として腸内細菌叢の制御による予防法と治療の開発を行う。5週齢のC57/BL6JマウスにGOX 80mg/kgを6日間連続で腹腔内投与し、尿路結石を形成させる。正常マウスの便を経口投与する群と投与しない群を比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトにおける結石患者と非結石患者の腸内細菌叢の解析として、施設内倫理委員会の承認を得て、腎結石を繰り返す患者(30人)、健常者(30人)の便を前向きに解析する予定であった。現在、5人ずつの便を解析中である。腸内細菌叢の同定は16S rRNA遺伝子で行っている。 腸内細菌叢、代謝産物と腎結石形成の関連性の解明として5週齢のC57/BL6Jマウスを用いてシュウ酸前駆物質であるグリオキシル酸(GOX) 80mg/kgを6日間連続で腹腔内投与し、尿路結石を形成させる。腸内細菌叢の代謝産物である短鎖脂肪酸を経口投与する群と投与しない群を比較する。GOX投与0、3、6日後に24時間尿、血清、腎を採取する。尿は代謝ゲージを用いて採取し、尿中無機物質(シュウ酸、クエン酸、カルシウム、リンなど)を測定する。また血清から脂質代謝を含めた一般生化学を測定する。腎組織中の結石形成量を偏光顕微鏡と、シュウ酸カルシウム染色であるPizzolato染色にて評価し、画像解析ソフトにて定量化を行う。また、腎周囲脂肪組織、並びに精巣上体、腸管膜、鼠蹊部の脂肪細胞の形態変化を確認するとともに酸化ストレスの検討のためSOD、結石形成促進因子であるCcl2、Spp1、IL-6、TNF-α、adiponectineのPCR、ELISA、Western blotを用いて定量、比較する。 ヒトの検体が思うように集まらず、全体としてやや遅れをきたしている。今後、より検体を集められるように結石患者への説明をしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは研究1としてのヒトの便検体の解析を進める。腸内細菌叢の同定は16S rRNA遺伝子で行っているが、ショットガンシークエンスも行う。また、代謝産物についても調べていく。ヒトの検体で得られた結果について多方面から検討していく。 結果として得られた代謝産物、腸内細菌叢を5週齢のC57/BL6Jマウスを用いてシュウ酸前駆物質であるグリオキシル酸(GOX) 80mg/kgを6日間連続で腹腔内投与し、尿路結石を形成させ投与群と被投与群を比較する。腸内細菌叢の代謝産物である短鎖脂肪酸を経口投与する群と投与しない群を比較する。GOX投与0、3、6日後に24時間尿、血清、腎を採取する。尿は代謝ゲージを用いて採取し、尿中無機物質(シュウ酸、クエン酸、カルシウム、リンなど)を測定する。また血清から脂質代謝を含めた一般生化学を測定する。腎組織中の結石形成量を偏光顕微鏡と、シュウ酸カルシウム染色であるPizzolato染色にて評価し、画像解析ソフトにて定量化を行う。また、腎周囲脂肪組織、並びに精巣上体、腸管膜、鼠蹊部の脂肪細胞の形態変化を確認するとともに酸化ストレスの検討のためSOD、結石形成促進因子であるCcl2、Spp1、IL-6、TNF-α、adiponectineのPCR、ELISA、Western blotを用いて定量、比較する。 ヒトの検体をできるだけ早く集めるための説明を外来、入院など適宜行っていく。
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Causes of Carryover |
腎結石形成において腸内細菌叢が関係している可能性に着目し、結石形成と腸内細菌叢の関与と、その制御による腎結石の新規治療法の開発を試みるという研究である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定してていた研究を進めることができなかった。また国際・国内学会出張も計画していたが、出張することもできなかった。このため次年度使用が生じた。[1]ヒトにおける結石患者と非結石患者の腸内細菌叢の解析 [2]腸内細菌叢、代謝産物と腎結石形成の関連性の解明 [3]腸内細菌叢の制御による予防法と治療の開発を加速させる。
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