2021 Fiscal Year Research-status Report
The investigation for the effect of spaceflight on muscle-bone crosstalk in mice
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21K21000
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大平 宇志 近畿大学, 医学部, 助教 (40633532)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 微小重力 / マウス / 骨格筋 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
国際宇宙ステーション内の微小重力または人工1-g環境で30日間飼育したマウスのヒラメ筋および長趾伸筋から抽出したタンパク検体について、液体クロマトグラフ質量分析装置を用いて発現プロファイルを解析し、微小重力環境飼育が及ぼす影響を評価した。また、各々の飼育環境で飼育したマウスの半数にはフラクトオリゴ糖(FOS)を含む餌を摂取させていたため、微小重力環境飼育に起因する両骨格筋のタンパク発現プロファイルの変化がFOS摂取により抑制される可能性についても検討した。 結果、1253種のタンパクの発現量について解析することができ、特にヒラメ筋(遅筋)において、微小重力環境飼育に伴う速筋化に起因するタンパク発現プロファイルの変化が確認された。また、同筋では、血液凝固や組織線溶にかかわるタンパクの発現変動も確認され、これらのタンパクが微小重力下における抗重力筋の特性変化にも関与する可能性が示唆された。さらに、FOS摂取はヒラメ筋の速筋化に起因するタンパク発現プロファイルの変化を軽微に抑制した。先行研究の結果とも合わせ、FOS摂取によるヒラメ筋の速筋化抑制効果は、FOSによる直接的な影響というよりは、腸内に到達したFOSをもとに腸内細菌によって産生され血中で増加した短鎖脂肪酸による間接的な影響によってもたらされた可能性が高いと考えられる。 さらに、微小重力環境で飼育したマウスのヒラメ筋から分泌され、液性因子(マイオカイン)として筋・骨連関に関与する可能性のあるタンパクを絞り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際宇宙ステーション内の微小重力または人工1-g環境で30日間飼育したマウスのヒラメ筋のタンパク発現プロファイルの変化から、微小重力環境で飼育したマウスのヒラメ筋から分泌され、液性因子(マイオカイン)として筋・骨連関に関与する可能性のあるタンパクを絞り込むことができている。現在は、そのリコンビナントタンパクを添加するin vitro実験にも着手し、マウス骨髄細胞の破骨細胞分化やマウス初代培養骨芽細胞の成熟過程における影響を検討している。 また、微小重力環境で飼育したマウスのヒラメ筋において血液凝固や組織線溶にかかわるタンパクの発現変動も確認されたことから、これらのタンパクが抗重力負荷抑制に伴うヒラメ筋の特性変化にも関与する可能性についての検討も進めている。具体的には、組織線溶系に異常をきたす遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスを後肢懸垂飼育し、後肢筋に生じる量・質的特性変化を比較する実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
微小重力環境で飼育したマウスのヒラメ筋で有意に増加し、液性因子としても報告があるタンパクについて、骨代謝に関与する可能性をin vitro実験系で検討する。骨吸収系への関与については、マウスの大腿骨および脛骨より単離した骨髄細胞を培養し、RANKL刺激により分化誘導され形成された破骨細胞の数についてリコンビナントタンパク添加群と非添加群で比較する。リコンビナントタンパクが破骨細胞形成過程に影響を及ぼす結果が得られた場合は、破骨細胞関連遺伝子の発現量解析も実施する。骨形成系への関与については、マウスの頭蓋骨より単離した骨芽細胞を培養する間にリコンビナントタンパクを添加し、骨芽細胞分化関連遺伝子発現およびALP活性、石灰化能への影響を評価する。 また、血液凝固や組織線溶にかかわるタンパクが抗重力負荷抑制に伴うヒラメ筋の特性変化にも関与する可能性についても検討する。具体的には、申請者の所属する教室で保有する組織線溶系に異常をきたす遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスを後肢懸垂飼育し、後肢筋に生じる量・質的特性変化を比較する。後肢筋の量的変化については、CT解析装置を用いた下肢筋量測定および摘出筋の湿重量や筋線維横断面積測定により評価する。質的変化については、筋の凍結横断切片を作成し、タイプIおよびタイプIIミオシン重鎖アイソフォームを免疫組織化学染色することで解析が可能な各種タイプ(IまたはII、I+II)の筋線維が占める割合の変化を評価する。さらに、後肢筋より抽出したRNAとタンパクを用いた解析も行い、骨格筋の量・質的特性制御の分子機構に組織線溶系が関与するメカニズムについても検討する。
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Research Products
(1 results)