2021 Fiscal Year Research-status Report
U1 snRNA変異型髄芽腫における異常ポリアデニル化の同定とその機序の解明
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21K21001
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
鈴木 啓道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90751024)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 髄芽腫 / U1 snRNA / ポリアデニル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では予後の悪いU1 snRNA変異型髄芽腫において、U1 snRNA変異による異常ポリアデニル化の同定とそれが病態形成に及ぼす機序を解明することを目的としている。具体的方法として、まずSHH型髄芽腫細胞株に対してU1 snRNA変異を導入した遺伝子発現細胞株を作成し、U1 snRNA変異型・野生型細胞株のそれぞれからRNAを抽出してポリアデニル化領域を濃縮し、シークエンスライブラリーを作成する。まずクローニングによってU1 snRNA野生型および変異型を発現するレンチウイルスベクターを作成し、このレンチウイルスベクターを3種類の髄芽腫細胞株(Daoy, UW228, ONS-76)に感染させてU1snRNA野生型・変異型それぞれの遺伝子発現細胞株を作成した。DaoyおよびONS-76の2種類では変異型U1 snRNAの発現が確認できた。UW228への変異導入は条件検討を継続している。 RNAのポリアデニル化領域を濃縮した3′-seqシークエンスライブラリー作成手法として主に使用されているMayr lab法と3′READS法を行った。Oligo(dT)でコーティングしたビーズを用いてpolyA+ RNAを濃縮して早期に逆転写反応により2本鎖DNAにするMayr lab法は結果が不安定であり、多検体への適応が難しいと考えられた。一方、3′ READS法では安定的なシークエンスライブラリーの構築が可能であり、条件検討を進めている。RNAの断片化を適切に工夫することで目的のサイズのシークエンスライブラリーが構築されており、シークエンスを行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は、ポリアデニル化部位の網羅的解析のための3′-seq法の確立をおこなっている。 当初は、Mayr法によりよりポリアデニル化部位の濃縮を行っていたが、最終的なライブラリの作成にバッチ間の偏りが大きく、多検体の処理には適さないと判断し、3′READS法に変更して手法の確立を行った。3′READS法ではOligo(dT)ビーズで選択したRNAを先に目的のサイズに断片化した上で、断片化RNAに対してアダプター配列を結合させ、最後に逆転写反応とPCRによりDNAライブラリーを作成する。RNAの断片化の際に使用する酵素が販売終了となっているため、マグネシウムイオン付加下で加熱する手法を用いて断片化を行い、目的のサイズとなる条件を確立。目的としているサイズのシークエンスライブラリが作成されており、今後シークエンスにて濃縮状態を確認していく。 細胞株(UW228, Daoy)への変異導入は、レンチウイルスベクターを作成して導入が完了。Daoyでは発現の確認が完了。UW228では、変異型ベクターの導入は確認できたが、5′RACE法による発現の確認できず原因を調べている。別の髄芽腫細胞株であるONS76にもウイルスを導入し発現が確認できているため、必要に応じてONS76を使用する。 臨床検体を研究協力機関から提供していただくための書類上の手続きが完了し、症例の選定を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き3′-seqの手法の条件検討をすすめ手技を確立する。さらに作成されたシークエンスライブラリーのシークエンスを進めていく。目的サイズのシークエンスライブラリーがすでに作成されているため、まずはシークエンスにてポリアデニル化部位の濃縮が行われているか確認を行い、細胞株および臨床検体への解析へと進めていく。ヒト髄芽腫検体の解析においては、髄芽腫のサブグループの判定とU1 snRNAの野生型・変異型の判定を行い、3′-seqの対象とする症例群の抽出を進める。 同時に、解析パイプラインを構築していく。シークエンスリードのマッピングから各ポリアデニル化領域の定量までの前処理法をまずか確立する。続いて、統計学的手法を用いた変異型・野生型での2群比較のアルゴリズムを確立し、異常ポリアデニル化部位の同定を行えるようにする。その後、de novoに生じる異常ポリアデニル化部位を同定可能なデータベースを用いないポリアデニル化部位の同定手法を確立する。 数例の細胞株および臨床検体から作成したシークエンスライブラリーに対し解析を行い、確立した解析パイプラインで検証および解析を行う。解析が問題なく行うことができることを確認し、解析症例数を増やしていく。同定された異常ポリアデニル化部位においては、RT-qPCRなどで検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
シークエンス予定が2022年度初旬となったため、2021年度の使用額が減少となり、2022年度に繰り越しを行った。
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