2021 Fiscal Year Research-status Report
神経成長因子受容体p75による歯原上皮の細胞増殖制御機構の解明
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21K21002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星川 聖良 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40900981)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 歯 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科再生分野において歯の発生メカニズムの解明とその臨床応用に向けた取り組みは必須の課題である。これまでに我々は、歯の発生過程で神経栄養因子の一つ、NGFがその低親和性受容体p75NTRを介して歯原性上皮細胞の増殖を促進することを発見した。p75NTRはTNF受容体ファミリーに属し、その下流シグナルが細胞の増殖や生存、アポトーシスなど多様なプロセスを調節することが知られているが、歯の形成における役割は未解明のままである。 そこで本研究は、歯原性上皮細胞でのp75NTRを介した細胞増殖制御の詳細な分子メカニズムの解明を目的とすることとした。 神経栄養因子刺激によるp75NTRの分子制御メカニズムはこれまで多様なモデルが提唱されている。その中で、p75NTRは、プロテアーゼ依存的に細胞内ドメイン(p75NTR-ICD)が切断を受け膜から遊離し、下流にシグナルを伝える機構が見出されており、通常のNGFシグナルとは別ルートのオルタナティブ経路と位置づけられている。しかしながらp75NTR-ICDを介した細胞機能調節分子メカニズムの詳細に関してその大部分は依然未解明であることから、それら分子基盤の一端を明らかとし、歯原性上皮細胞増殖におけるp75NTR-ICDの役割解明に取り組んでいる。解析の結果、p75NTR-ICDのタンパク質半減期が極めて短く、不安定な特性を有することが確認されており、p75NTR-ICD分解阻害がp75NTR下流シグナルの増幅に有効なのではないかと考えている。現在、ウイルスベクター遺伝子導入技術を用い、全長p75NTRおよびp75NTR-ICDの安定発現細胞株を作製し、3次元培養系を用いて増殖・分化能についての検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度に関しては歯原性上皮細胞増殖におけるp75NTR-ICDの機能解明を目的とし、ウイルスベクター遺伝子導入技術を用い、全長p75NTRおよびp75NTR-ICDの安定発現細胞株の作製および三次元培養下における培養条件の検討を行った。ウイルスベクターによる遺伝子導入および細胞株作製培養については予定通り目的を達成することが可能であった。しかし、細胞の生理的な培養条件特定に時間を要したことから、現在、増殖・分化能についての解析を進めている状態であるため、予定していた計画よりもやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には、令和3年度に達成出来なかった、全長p75NTRおよびp75NTR-ICDの安定発現細胞株における増殖・分化能についての解析を進める。 同時に歯原性上皮細胞内でp75NTR-ICDと結合するタンパク質を網羅的に同定する目的で、 HA抗体を用いてHA-p75NTR-ICDを免疫沈降にて精製し、質量分析法で解析を行うほか、トランスクリプトーム解析によりp75NTR-ICD発現に依存的なNGF刺激後の細胞内遺伝子発現変化をRNA-seq解析により同定し、下流経路解析に供する。さらに、リン酸化酵素アレイ解析によりシグナル分子リン酸化を検出し、下流シグナルの絞りこみを行う。検出された結合分子の中からp75NTR-ICDタンパク質の分解に関わるE3ユビキチンリガーゼを選別し、p75NTRタンパク質分解を司る分子の同定を試みる。さらにタンパク質分解を受けない安定化型p75NTR-ICDを作製してウィルスベクターで細胞に導入し解析に用いる。3次元培養系にて、p75NTR-ICD 野生型・安定化変異体発現の影響を評価する。加えて、p75NTR欠損マウスの歯の表現系について、胎児および新生児の臼歯歯胚を用いてp75NTRが歯胚発生段階にどのように関与しているか観察するほか、歯胚細胞のプライマリー培養系を用いて増殖・分化への影響について解析する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は細胞培養条件特定が困難であったため、当初予定していた実験計画よりも、年度内に実施が困難であった研究があった。 そのため、前年度に実施予定であったトランスクリプトーム解析や質量分析に加えて、本年度予定しているp75NTR欠損マウスの歯胚解析など比較的予算規模の大きい研究を本年度に行う。
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