2021 Fiscal Year Research-status Report
量子・X線ビーム技術および数理モデルの統合による抗う蝕性イオンの動態解析
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21K21009
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 克昭 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70909506)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 根面う蝕 / 象牙質 / PIXE/PIGE / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,量子・X線ビーム技術を応用した各種分光法で測定したデータと,数理モデルを用いた理論的解析を組み合わせて,抗う蝕性イオンの動態現象を時間・空間的に明らかにすることである. 上記目的を達成するために,令和3年度は(1)健全・脱灰象牙質の定量的イオン濃度分布,(2)象牙質に取り込まれたイオンの拡散様式の数理モデル化,について研究を実施した. (1)について,材料に由来するイオンを導入した健全および脱灰根面象牙質試料を作製し,PIXE/PIGE法を用いて定量的な多元素濃度を測定した.フッ化物イオンは塗布された表層で最も高い濃度を示し,深部に向かって徐々に減少した.また脱灰された象牙質試料は,深部においても高濃度を維持しており,健全象牙質とは浸透様式が異なることがわかった.フッ化物イオンの濃度に対して最小2乗法を用いることにより,象牙質へのフッ化物イオンの拡散係数を推定した. (2)について,象牙質を模倣したモデルとして,代表体積要素モデルを利用したメソスケールの解析モデルを構築した.令和3年度は数理モデルの確立を目指し,まず(1)で得られた拡散係数を反応拡散方程式に適用して計算を行った.均一なバルク試料として解析を行った結果,定常および非定常状態のどちらでもイオンの拡散現象を計算することができた.また次の段階として,象牙質と象牙細管内の拡散係数を分けて計算することにより,実験的には把握することのできないメソスケールでのフッ化物イオンの拡散現象を可視化することができた. 今後の方針として,現時点では拡散現象のみを対象としているが,実際の象牙質においては歯髄からの内圧が生じているため,ナビエ・ストークス方程式を組み合わせたマルチフィジックス解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,高崎量子応用研究所でのマシンタイムが十分に確保されたことにより,象牙質に対するフッ化物イオンのデータを早期に取得することができた.上述の結果より,高崎でのPIXE/PIGEデータの測定および解析,拡散係数の推定を終えた.また有限要素解析に必要なモデルの作製およびデータの取得も順調に進んでいる.象牙質に対するフッ化物イオンの拡散様式を反応拡散方程式で再現できることまで確認できた.以上より,当初計画に準じて研究を実施しており,順調に成果が出ていると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
象牙質に浸透したイオンの耐酸性への影響を確認するため,μCTで耐酸性を評価する.またイオンの結合状態や結晶構造への影響を調べるために,X線回折法,X線光電子分光法を実施する.並行して反応拡散方程式とナビエ・ストークス方程式を基礎とした有限要素法で,象牙質に対するイオン拡散現象再現するために,モデルの再現度の向上を実施する.
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Causes of Carryover |
R3年度日本歯科保存学会(新潟県開催予定)がオンライン開催になったため,旅費が不要になったことおよび使用ソフトウェア(COMSOL Multiphysics)の購入予定だった追加モジュールが,数理モデルの最適化により購入を延期したため,予算の繰越となった. R4年度も高崎量子応用研究所での測定および有限要素法による解析を進める際に必要な旅費の計上と物品の購入をすすめる.またマルチフィジックス解析では,より複雑な現象を再現しようとすると追加モジュールの購入が必要となるため,その購入費用に充てる予定である.
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Research Products
(1 results)