2021 Fiscal Year Research-status Report
異端Wnt受容体Rykシグナルによる骨形成制御機構の解明
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21K21027
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
岩本 莉奈 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | Ryk / Wnt / 骨芽細胞 / 脂肪細胞 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在超高齢化社会を迎えた日本において、骨喪失疾患の克服は喫緊の課題であると言える。骨量の調節において重要な因子であるWntの受容体であるRykは、申請者の研究室によって骨形成に関与する因子であることが明らかにされた。しかしながら、数あるWntリガンドの中で、どのWntリガンドがRykを介して骨形成作用をもたらすか全く未解明のままであった。申請者は、骨芽細胞特異的Ryk欠損(Ob-Ryk cKO)マウス及び野生型(WT)マウスから骨を採取し、Ob-Ryk cKOマウスでは負の調節を受けずにRyk結合性Wntリガンド発現が増加していると仮定してRNA-seqを行った。その結果、Ob-Ryk cKOマウス骨おいてWnt4及びWnt10b発現が増加していることが明らかになった。そこで、Wnt4及びWnt10bが、Rykの作用である骨形成を促進する機能を有しているか検討するために、骨芽細胞への分化能を有するST2細胞にWnt4及びWnt10bの過剰発現を行った。その結果、Wnt4及びWnt10bともに骨芽細胞分化を促進し、Ryk機能と一致する結果となった。また、Ob-Ryk cKOマウス骨髄において脂肪細胞が多いことが示唆されており、Wnt4及びWnt10bの脂肪細胞分化への影響も検討した。ST2細胞を脂肪細胞分化培地で培養する際に、Wnt4及びWnt10bの過剰発現した結果、Wnt4及びWnt10bともに脂肪細胞分化を抑制することを見出だした。加えて、骨髄間質細胞(BMSC)への影響を調べるために、LepRを免疫染色により検出した結果、Ob-Ryk cKOマウス骨髄に存在するBMSCが少ないことが明らかになった。これらの結果は骨組織において、Wnt4及びWnt10bはRykを介してBMSC数の調整、及びBMSCの骨芽細胞分化のコミットメントに関与している可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにRykシグナルを駆動するWntリガンド候補を、Wnt4及びWnt10bに絞り込むことができた。Wnt4及びWnt10bはRykを介して骨髄間質細胞の骨芽細胞分化のコミットメントに関与していることが示唆されたため、骨髄間質細胞への影響も当初の計画に加えて実施した。その結果、骨芽細胞特異的Ryk欠損マウスにおいて、LepR陽性の骨髄間質細胞数が減少しており、骨髄においてKi67陽性の増殖細胞数も減少していることを見出した。そのため、Rykは骨髄間質細胞の幹細胞性の調節にも関与している可能性を新たに示唆することができた。一方で、Wntシグナル阻害因子であるSclerostin及びDKK1とRykの関係性に関しては、Sclerostin及びDKK1の過剰発現によるRykシグナルを阻害できるか検討したものの、細胞内でWnt4及びWnt10bと相互作用している可能性が示唆されたため、リコンビナントSclerostin及びDKK1の処理実験に移行しているところである。以上の理由から、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在行っているSclerostin及びDKK1処理実験によりRykに対する阻害作用を有しているか引き続き検討を行う。また、ST2細胞に対してRykノックダウンによりWnt4及びWnt10bの骨芽細胞分化促進及び脂肪細胞分化抑制が生じるか検討する。加えて、RykがWntシグナル古典経路の受容体であるLRP5/6と相互作用するか検討するために、Ryk, LRP5/6, Ryk及びLRP5/6のノックダウンを行い、Wnt4及びWnt10bによる作用にどのような変化が見られるか検討する。
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Causes of Carryover |
Sclerostin及びDKK1過剰発現実験において、細胞内で過剰発現したSclerostinとDKK1が、過剰発現したWnt4及びWnt10bと相互作用している可能性が示唆されていたため、再度実験計画を組み直していた。その際に生じるはずであった培養のルーチンワークにかかる費用、解析にかかる試薬の購入を一時的に止めていたために次年度使用額が発生した。今後はリコンビナントSclerostin及びDKK1処理実験を行うため、これらの試薬の購入に使用する。
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