2021 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケールで迫る歯肉上皮バリア機構の脆弱性の探索
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21K21038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 恵理子 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00755069)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 歯肉上皮細胞 / 歯肉上皮バリア / 歯周病 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病の発症は、感染から歯周組織を守る上皮バリアが決壊し、上皮細胞の脱落により歯周ポケット内に潰瘍が形成されることにより始まる。この潰瘍面から供給される血液を得て、歯周病原性菌がバイオフィルム内で増加し、dysbiosisと呼ばれる状態となった高病原性化バイオフィルムが、宿主の防御力を凌駕し歯周病が進行していく。このように歯周病の発症および進行に、上皮バリアの破綻が大きく関与しているものの、上皮バリアの恒常性を担う分子については未だ不明な点が多い。本研究では、歯周組織の上皮バリア恒常性に関わる分子基盤を探るモデルとして、若年齢で歯周病を発症する遺伝性疾患であるKindler 症候群とその責任遺伝子FERMT1 に着目している。歯肉上皮バリア機能に対するFERMT1の役割を組織学的、分子生物学的手法を用いて検討することにより、歯周病発症・進行のメカニズムの一端を歯肉上皮バリア機能の崩壊の側面から明らかとすることを目的として、現在研究を進めている。 まず、ヒト歯周組織サンプルを用いて、FERMT1タンパクの発現の局在を免疫組織化学染色にて検討し、ヒト歯周組織においてFERMT1タンパクの発現の局在を明らかにした。 歯肉上皮バリア機能に対するFERMT1の役割を、分子、細胞レベルで検討するために、FERMT1ノックアウト歯肉上皮細胞株樹立が必要である。現在、限界希釈法によるシングルセルクローニングを行い、凍結細胞ストックの作製まで終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織化学染色により、ヒト歯周組織においてFERMT1タンパクが発現していることを確認し、FERMT1タンパクの局在を明らかにすることができた。 FERMT1ノックアウト歯肉上皮細胞株樹立に関しては、凍結細胞ストックの作製まで終了しており、シークエンス解析を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. FERMT1遺伝子改変歯肉上皮細胞における細胞学的、組織学的変化の検討:作製したFERMT1ノックアウト歯肉上皮細胞株を用いて、細胞形態ならびにクラスター形態の変化を観察する。また、三次元細胞積層体の培養技術を用いて、FERMT1遺伝子改変歯肉上皮細胞三次元細胞積層体を作成し、より生体に近い環境での組織学的変化を観察する。 2. FERMT1の歯肉上皮細胞における機能の検討:FERMT1遺伝子改変歯肉上皮細胞と対照細胞を用いて、透過性実験、coating dish、 in vitro wound closure assayによりFERMT1の歯肉上皮細胞における役割の検討を行う。
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Causes of Carryover |
3月中旬に生産完了予定の抗体を予約し、購入を予定していたが、製造元で抗体の生産が遅延したため、物品費92680円を繰り越した。次年度、抗体が生産完了次第、購入し、物品費として計上する。
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