2021 Fiscal Year Research-status Report
Biological mechanism and recovery experiments on reduced bone growth of murine X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalacia
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21K21053
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | X染色体連鎖性低リン血症くる病・骨軟化症 / Hypマウス / 軟骨内骨化 / 血管侵入 |
Outline of Annual Research Achievements |
PHEX 遺伝子変異によるX染色体連鎖性低リン血症くる病・骨軟化症(XLH)では、O脚やX脚などの骨変形、骨成長障害による低身長などが生じる。これら骨異常の原因として、骨基質低石灰化があげられているものの、石灰化抑制だけが骨成長異常の原因とは考えにくく、未だ不明な点が多い。そこで、骨成長異常の病理機序解明を目的として、XLHモデルであるHypマウスの大腿骨を組織学的に解析した。 長軸方向の成長の起点となる成長板軟骨について観察すると、野生型マウスと比較して、Hypマウス大腿骨の成長板軟骨は著しく厚みを増しており、軟骨細胞のカラムの配列が乱れていた。また、野生型マウスの成長板軟骨で生じる軟骨内骨化では、肥大化層下部から軟骨カラム間に基質石灰化が長軸方向に形成され、軟骨カラム内に向かってMMP-9強陽性/endomucin陽性血管が侵入していた。しかし、Hypマウスでは肥大化層に石灰化が誘導されず、不規則な骨・軟骨境界部を呈していた。また、その部位の軟骨細胞には、肥大化しておらず小腔に入った小型の細胞として観察されるものも存在し、周囲の軟骨基質にはosteocalcin陽性反応が認められた。このような骨・軟骨移行部において、endomucin陽性血管およびその周囲基質はMMP-9強陽性反応を示したが、軟骨カラム内への血管侵入が抑制されていた。以上のことから、Hypマウスでは、軟骨基質にosteocalcinなどの基質蛋白が過剰に沈着することで、軟骨侵入部位の血管がMMP-9などの基質分解酵素を産生したとしても十分に軟骨基質を分解できず、結果として軟骨への血管侵入抑制とそれに伴う軟骨内骨化異常が生じる可能性が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、2021年度の解析において、Hypマウスの骨成長異常の原因として、成長板軟骨における基質蛋白の異常沈着、および、軟骨への血管侵入抑制に起因する可能性を見出した。また、軟骨基質に過剰に沈着する基質蛋白としてPhexとの相互作用が知られるSIBLING family(DMP1、オステオポンチン等)を明らかにしており、骨成長異常メカニズムの一助を解明しつつある。また、これらを踏まえて、2022年度の研究計画であるHypマウスの骨異常改善実験に一部着手し始めていることから、本研究は順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、Hypマウスの骨異常改善を目的とした治療実験に着手する。具体的な計画として、Hypマウスに従来のXLH治療で用いられるリン補充に加え、軟骨内骨化部位での基質分解異常を改善するカテプシンB阻害剤を投与することで、Hypマウスの骨異常が改善するか否かを検索する。リン製剤およびカテプシンB阻害剤を投与したHypマウスの大腿骨をマイクロCT撮影にて観察するとともに、パラフィン切片を作製し、alkaline phosphatase:ALP(、FGF23, MMP-9, endomucin,SIBLING family 蛋白(DMP1, MEPE, osteopontin), osteocalcin等の局在をSTEDやSIMなどの超高解像レーザー顕微鏡にて検索する。また、一部の大腿骨は未脱灰でEpoxy樹脂に包埋し、von Kossa染色(石灰化解析)、ならびに、透過型電子顕微鏡を行い、血管内皮細胞の軟骨基質侵入の微細構造を明らかにする。加えて、血清カルシウム・リン・FGF23・1,25(OH)2D3・PTHの測定や、軟骨・骨領域サンプルの遺伝子発現解析を行う。
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