2021 Fiscal Year Research-status Report
Heat-shock Proteinsが歯根膜コラーゲンの恒常性維持に果たす役割
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21K21061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西川 有彩 大阪大学, 歯学研究科, 特任研究員 (70910181)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | Heat-shock Proteins / コラーゲン / 歯根膜 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根膜は、弾性結合組織として歯を支持するのみならず、歯周組織の修復・治癒、再生の場としての重要な役割を担っている。歯根膜の恒常性維持には、コラーゲンなどの ECM タンパクが正しい立体構造のタンパクとして産生、調節制御されることが重要である。口腔内の様々な環境ストレスが、歯根膜細胞のコラーゲンや細胞外基質 (ECM) タンパクの恒常性、すなわち変性、凝集、分解の動態変化を介して ECM タンパク産生や細胞増殖・分化能に及ぼす分子メカニズムの詳細は、未だ明らかとなっていない。 本課題は、老化やメカニカルストレス、細菌種などの様々な環境ストレスが歯根膜細胞の Heat-Shock Proteins (HSPs) の機能発現に及ぼす影響を明らかにすると共に、HSPs の機能低下により細胞内に凝集・蓄積した変性コラーゲンが同細胞の機能に及ぼす影響を検討することで、歯根膜細胞における異常な立体構造の変性コラーゲンの代謝・調節機構を明らかにすることが目的である。本研究により、未だ疾患の進行にいたる分子的背景が不明な高齢者の歯周組織の老化機構のみならず、歯の萌出異常や咬合性外傷などの歯根膜/コラーゲン線維が関係する疾患の病態生理の一端を解明し、新規の予防・治療法の開発に繋げることを目指している。 これまでに、老化細胞において、HSPs の発現低下と変性コラーゲンの細胞内集積及び成熟コラーゲン産生・分泌の低下が認められた。さらに、高週齢マウスの歯根膜組織切片においても、変性コラーゲンの増加が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト歯根膜細胞を継代培養することで複製老化を誘導、樹立した老化歯根膜細胞を用いて、老化歯根膜細胞における細胞内局在をI型コラーゲン特異抗体と変性コラーゲンの検出が可能な蛍光プローブ Collagen Hybridizing Peptide(CHP, 3Helix)を用いて共焦点顕微鏡(SP8, Leica)で観察し、成熟コラーゲンの産生・分泌に及ぼす影響を検討したところ、老化細胞で変性コラーゲンの細胞内集積及び成熟コラーゲン産生・分泌の低下が認められた。さらに、高週齢マウスの歯根膜組織切片においても、変性コラーゲンの増加が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
HSPs 誘導薬/阻害薬、コラーゲンへの特異性が報告されている HSP47siRNA 処理によるタンパク立体構造 (フォールディング) の調節・制御が、小胞体ストレス応答を介して歯根膜細胞の増殖、硬組織形成の生理機能に及ぼす影響について in vitro で解析を行う。 高週齢マウスで絹糸結紮歯周病モデルを構築し、μCT 観察と歯周組織切片のコラーゲン染色 (コラーゲン: van Gieson、変性コラーゲン: CHP 染色) と HSPs の免疫組織化学染色により病理観察を実施する。同モデルに HSPs 誘導薬を経口投与し、老化/HSPs 低下/ECM タンパク異常/骨吸収の病態を検討することで、HSPs 賦活化の臨床効果を in vivo モデルで検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により試薬や試料の納入に遅れが生じたため。 老齢マウスを購入予定である。
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Research Products
(1 results)