2021 Fiscal Year Research-status Report
コラーゲン糖化修飾を用いた新規歯髄内石灰化誘導法の開発
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21K21063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 敬多 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70910800)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | AGEs / 糖化コラーゲン / デンティンブリッジ / 直接覆髄 / 異栄養性石灰化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内においてタンパク質と糖の非酵素的糖化修飾により形成される糖化最終産物(Advanced Glycation End products ; AGEs)は糖尿病をはじめとした代謝性疾患の病態因子である一方で、骨や象牙質などの石灰化物形成を促進することが報告されている。申請者らはラット培養歯髄細胞を用いた研究からコラーゲンの糖化により作製したAGEsはCa2+イオンの集積と異栄養性石灰化を中心としたメカニズムで歯髄細胞による石灰化を促進することを明らかにした。当該研究課題ではAGEsによる歯髄細胞の石灰化促進メカニズムの更なる解析を目指して、糖化ゼラチンスポンジによるラット臼歯部への直接覆髄実験を行い、多面的な解析を進めてきた。現在までにマイクロCTによる石灰化物の形態や質の評価や石灰化物形成の有無のスコアリングによる糖化ゼラチンスポンジと石灰化物形成の関連の有意差検定、ヘマトキシリンエオジン染色による組織学的観察、走査型電子顕微鏡による微細構造観察を行った。これらの結果から糖化ゼラチンスポンジはラット臼歯部の直接覆髄に用いるとデンティンブリッジ様の石灰化物形成を促進する傾向がみられた。糖化ゼラチンスポンジにより形成された石灰化物は象牙質様構造を一部含んだ不定形で、内部には石灰沈着を伴う壊死した細胞塊が認められた。また一般的なデンティンブリッジに比べると石灰化度が高く、厚みを持ち、露髄面を歯髄側から大きく封鎖する傾向がみられた。石灰化物周囲にはリンパ球等の炎症性の細胞浸潤や血管の拡張はないが、象牙芽細胞や線維芽細胞の配列が乱れており、血管やコラーゲン線維の萎縮も認められた。現在、石灰化関連マーカーやAGEsとそのレセプターであるRAGE関連マーカーを中心とした免疫組織化学染色や透過型電子顕微鏡による観察を進めており、更なる現象の解明を目指していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖化ゼラチンスポンジを用いたラット臼歯部への直接覆髄実験において、糖化ゼラチンスポンジがデンティンブリッジ様の石灰化物形成を促進する傾向が高いことが明らかになった。しかし、現在までに統計学的に有意な影響を示すことはできなかった。 これはサンプル数が少ないことや当該研究課題を始めた当初の窩洞形成や覆髄の手技が不安定であったことが影響していると思われる。また、ラット臼歯の脱灰、包埋操作が困難であることやゼラチンスポンジの脱水操作が困難であることから観察試料の作製にも多くの時間を費やした。実験手法が安定した現在では、より迅速に観察、解析を進めていけると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
糖化ゼラチンスポンジを用いたラット覆髄実験において、パワーアナライシスからサンプル数を再度検討し、同系で追加実験を行う。そして糖化ゼラチンスポンジと歯髄内の石灰化との関連について統計学的な評価を定める。免疫組織化学染色による光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察を主体に現在までの細胞培養実験の結果を踏まえて石灰化のメカニズムの解明を行う。
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Causes of Carryover |
国内外での学会発表がオンラインになったため旅費が必要なくなった。および、動物実験における順序変更から予算の多くを占める抗体の購入次期が変更になったため。
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