2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of cancer bone infiltration and metastasis via FLRT2 and evaluation of possibility of bone metastasis prevention by Flrt2 control.
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21K21071
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
白川 純平 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90782996)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔癌細胞 / 骨芽細胞 / Flrt2 / 分泌タンパク / 脈管浸潤 / 細胞間相互作用 / 癌骨転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮癌におけるFLRT2の発現はこれまで正確に評価されたことがなかったため、まずその発現の有無及び臨床病態との相関について検討した。悪性度の高いYK分類3以上の臨床検体をランダムに選出し9検体をRANseq解析した。その結果、9の検体のうち3の検体にFLRT2の高発現を認めた。これを臨床病態のYK分類、性別、年齢そしてTNM分類と比較検討したが相関は認めなかった。一方、病理学的脈管浸潤の分類とは相関を示した。さらに追試としてFLRT2の発現をリアルタイムPCR確認したところ同様の結果を得た。FLRT2の受容体として知られるUNC5ファミリーの発現には明らかな違いは認められなかった。さらに当科で所有する15の口腔扁平上皮癌細胞株におけるFLRT2の発現を調べたところ、発現に大きな違いがあることが明らかとなった。自身が破骨細胞におけるFLRT2の機能解析を行った際と同様に、FLRT2を高発現する癌細胞株においても細胞膜上に生成されたFLRT2が切断され分泌タンパクとなるのかをウエスタンブロットで確認した。その結果、細胞表面に存在するものより多くの分泌型FLRT2が培養液内に放出されていることが確認された。以上の結果から、脈管浸潤を示す口腔癌細胞でFLRT2の発現が高く、生成されたFLRT2はその細胞表面から切断分泌されることで何らかの機能を果たすことが予想された。 他方で、骨芽細胞におけるFLRT2の発現をリアルタイムPCRを用いて解析したところ、分化が進むにつれその発現は減少することが明らかとなった。 今後上記の細胞種におけるFLRT2の機能解析を行うため過剰発現ベクターのトランスフェクション効率を検証しており、現在のところ口腔扁平上皮癌細胞株における10から30倍の発現上昇を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験開始時に予定していた実験であるRNAseqは既に完了しており、解析を進めている。バイオインフォマティックの技術者がいないため、一部解析が遅れている。RNAseqの結果を基にしたリアルタイムPCRは問題なく遂行することができ、結果も予想していた結果が得られている。臨床病態との相関に関しては検体に限りがあったものの予想以上に明確な差異を示す結果が得られた。ウエスタンブロットの結果に関しては1検体でしか行えておらず今後複数検体での確認が必要である。今後細胞間相互作用を検討する上で必要となる過剰発現ベクターの確認は終えており良好に機能することが確認できている。その一方、発現抑制に用いるウイルスベクターに関しては実験室環境の整備及びウイルス発現細胞株の購入が行えておらず今後の検討課題である。 骨芽細胞におけるFLRT2の解析においては基盤データであるRNAseqのデータを模倣する結果が骨芽細胞株を利用した分化誘導実験におけるリアルタイムPCRでも得られており概ね良好である。一方で、過剰発現ベクターによる効果は不十分であり今後実験条件や試薬の変更などの検討が必要である。 動物実験の準備として施設使用許可を得る準備をしているが現状は許可を待っている状況であり開始時期は未定である。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAseqデータをもとに関連経路の解析を網羅的に行う。それによりFLRT2が関連する経路及び新規の癌骨転移関連因子の可能性を模索する。P2施設の承認を得た上で、ウイルス生成細胞株を購入し発現制御ウイルスベクターの安定的な生成を行う。恒常的にFLRT2を発現する癌細胞に発現抑制ウイルスベクターを用いFLRT2発現の抑制効率を検討する。過剰発現及び発現抑制を行った癌細胞株におけるオートクラインによる細胞動態への影響を増殖と遊走能に関して検討する。さらに、血管内皮細胞、神経細胞、骨芽細胞そして破骨細胞との共培養実験を行い、癌細胞から発現分泌されるFLRT2の周辺細胞に与える影響を増殖及び分化を中心に検討する。 骨芽細胞株における過剰発現ベクターの導入効率を検討し安定してFLRT2を骨芽細胞株内で高発現するベクターの作成と形質導入方法を確立する。その上で、骨芽細胞における恒常的なFLRT2の発現が骨芽細胞に与える影響を分化能及び増殖能を中心に検討する。 FLRTR2を過剰発現または発現抑制された癌細胞をマトリゲルを用いてヌードマウスの背部に移植し経時的な癌の増大及び転移の有無を検討する。 分泌型FLRT2は血中にも放出されることが予想されることから、口腔扁平上皮癌患者の術前採血の結果(FLRT2の有無)と術後検体における脈管浸潤の有無の相関関係及び予後の相関関係を検討する。
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Causes of Carryover |
本年は海外学会での発表機会が得られたもののコロナ禍という事もあり直接参加することができなかったため旅費として確保していた部分に不使用分が生じた。また、P2施設認定を取得するのに時間を要したため最終的に使用を予定していたレトロウイルス発現細胞株の購入に至らなかった。 次年度に持ち越された部分は、上記で購入予定であったレトロウイルス発現細胞株の購入に加え、新規に研究課題として挙げた骨芽細胞、破骨細胞以外の神経細胞及び血管内上皮細胞株の購入に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)