2021 Fiscal Year Research-status Report
歯肉上皮バリア機能に対する統合ストレス(ISR)の関与の解明
Project/Area Number |
21K21084
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生川 由貴 大阪大学, 歯学研究科, 特任研究員 (40910188)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞間接着分子 / 高血糖 / 歯肉上皮細胞 / 酸化ストレス / ISR / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、糖尿病患者の歯周病悪化のメカニズムの一端を歯肉上皮細胞のバリア機能に焦点をあて、酸化ストレスと統合的ストレス応答 (integrated stress response : ISR) の関与に着目し、その詳細を解明することを目的としている。 通常、細胞に取り込まれた糖は解糖系で代謝されるが、高血糖に伴い取り込まれる糖の量が増えると、解糖系だけでは処理しきれなくなり、側副経路が活性化されたり、酸化ストレスが亢進すると報告されている。そこで、本年度は研究の課題として挙げている高血糖状態の歯肉上皮細胞における酸化ストレスの影響について検討した。 方法としては、正常血糖 (5.5 mM D-glucose) および高血糖 (30 mM D-glucose) 条件下で14日間培養した歯肉上皮細胞 (epi 4) を実験に供した。Claudin1の遺伝子発現の変化を指標として、細胞間接着分子の発現低下を確認すると共に、細胞内の活性酸素 (Reactive Oxygen Species:ROS) の蓄積を測定した。さらに、抗酸化物質であるN-acetyl-cysteine (NAC) を添加し、epi 4を14日間培養後、細胞間接着分子であるClaudin1の発現変化をReal time PCR法にて検討した。 ROSの量を蛍光強度にて測定した結果、高血糖条件において有意なROSの産生亢進が認められた。また、高血糖状態の歯肉上皮細胞における細胞間接着分子の発現低下に対して、NACによる有意な阻害効果が認められた。これらのことより、高血糖状態の歯肉上皮細胞における細胞間接着分子の低下に対する酸化ストレスの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高血糖状態の歯肉上皮細胞 (epi 4) において、有意なROSの産生亢進が認められた。さらに、高血糖状態のepi 4における細胞間接着分子の発現低下に対して、抗酸化物質 (NAC) による有意な阻害効果が認められた。これらのことより、高血糖状態の細胞間接着分子の発現低下と酸化ストレスが関与していることが示唆され、当初の実験計画通り進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究実施計画としては、引き続き酸化ストレスの影響の検討および統合的ストレス応答 (integrated stress response : ISR) の検討を行う。 具体的には、本年度歯肉上皮細胞 (epi 4)で確認した酸化ストレスについてnormalマウスとdb/dbマウスの歯肉組織においてもROSの蓄積を検討する。本年度mRNAで確認した高血糖状態のepi 4における細胞間接着分子の発現低下に対するNACの阻害効果をタンパク発現で同様の結果が得られることを確認する。 さらに、高血糖によるROSなどのストレスにさらされた細胞はEukaryotic Initiation Factor 2 (eIF2) がリン酸化され、ISR経路が活性化されると報告されている。そこで、epi 4を用いて、高血糖によるeIF2のリン酸化をタンパク発現にて検討する。また、ISRを抑制する低分子化合物であるIntegrated Stress Response Inhibitor (ISRB) をepi 4の培養液中に添加し、14日間刺激を行った後、細胞間接着分子の発現変化を検討する。
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Causes of Carryover |
in vitroの実験は、当初の実験計画通り順調に進捗している。一方で、マウスを用いる実験を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の急速な感染拡大の影響で本年度は断続的に実験を制限され、マウスの実験においては計画通りに十分進まなかったため、次年度使用額が生じた。今後、当初計画していたマウスの実験をin vitroの実験と並行して行い、最終的に全額を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Porphyromonas gingivalis induces entero-hepatic metabolic derangements with alteration of gut microbiota in a type 2 diabetes mouse model2021
Author(s)
Yoichiro Kashiwagi, Shunsuke Aburaya, Naoyuki Sugiyama, Yuki Narukawa, Yuta Sakamoto, Masatomo Takahashi, Hayato Uemura, Rentaro Yamashita, Shotaro Tominaga, Satoko Hayashi, Takenori Nozaki, Satoru Yamada, Yoshihiro Izumi, Atsunori Kashiwagi, Takeshi Bamba, Yasushi Ishihama, and Shinya Murakami
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 11(1)
Pages: 18398
DOI
Peer Reviewed / Open Access