2022 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の進展と転移におけるEMTおよびCSC形質誘導機序の解明
Project/Area Number |
21K21085
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸本 聡子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70912228)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 口腔癌 / Wntシグナル / EMT(上皮間葉転換) / CSC(癌幹細胞様細胞) |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、まず、EMT誘導が亢進しているヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株においてWnt5bの発現が上昇していることをRT-qPCR法で確認した。この株に、ヒトOSCC細胞のEMT誘導を抑制する転写因子であるGATA6を過剰発現させたところ、RT-qPCR法において、EMT関連マーカーの発現変化はEMT誘導を抑制する方向に変化し、Wnt5bの発現も減少していることが明らかとなった。一方で、Wnt5bの受容体とされているFrizzled受容体およびRor2受容体の発現についてはGATA6の過剰発現による影響は確認できなかった。これらの結果から、ヒトOSCC細胞におけるWnt5bの発現がGATA6のEMT誘導抑制機構に関与している可能性が示唆された。 研究期間を通じて以下の結果と考察を得た。EMT誘導が亢進しているヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株においてはWnt5bの発現が上昇しており、さらに細胞濃度依存的にWnt5bの発現量が増加する傾向にあった。また、Frizzled受容体およびRor2受容体も同様の傾向が認められた。悪性腫瘍の種類によってはがん遺伝子として機能する可能性が示唆されているGATA6をヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株に過剰発現させたところ、EMT誘導を抑制する方向に変化し、またWnt5bの発現も減少していることが明らかとなった。一方で、Frizzled受容体およびRor2受容体の発現についてはGATA6の過剰発現による影響は確認できなかった。以上から、ヒトOSCC細胞におけるWnt5bの発現はGATA6のEMT誘導抑制機構と関与している可能性が示唆されたが、受容体であるFrizzled受容体およびRor2受容体の発現は、GATA6とは別の機構により制御されているか、あるいはWnt5bの濃度依存的に変動すると考えられた。
|