2021 Fiscal Year Research-status Report
全国レセプトデータを活用した在宅医療の利用に影響する社会経済的要因の解明
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21K21111
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
雨宮 愛理 京都大学, 医学研究科, 研究員 (70728394)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 健康の社会的決定要因 / 在宅医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、在宅医療の選択と利用に影響する個人の社会経済的要因(所得・地域の社会経済的指標)のうち重要度の高い客観的指標を特定することである。 具体的には悉皆性の高い全国のレセプトデータ(診療報酬明細書)を活用して、全年齢の在宅医療の利用と個人の所得・地域の社会経済的指標との相互関連性を明らかにした。これらの分析には複数の地域レベルと個人の階層とを考慮したマルチレベル分析を用いた。 本研究の意義は、個人の社会経済的状況を考慮した、在宅医療の効率的かつ公平な普及に資するエビデンスの創出にむけて、高齢者の健康格差是正の施策立案につながる基礎資料として貢献することである。『在宅医療の利用に影響する個人の社会経済的要因は何か?』という問いに答えるものである。これは根源的な問いの一つとなるものであり、在宅医療の利用実態の解明により答えが導かれると考えられる。在宅医療の利用を阻む要因を知ることで、在宅医療の資源の配分のための政策の意思決定プロセスに大きく貢献すると考える。 本研究はこれまでの先行研究にある測定の難しい在宅医療のニーズやアクセスでなく、測定可能な行動である実際の在宅医療の利用実態をリアルワールドデータで客観的に明らかにするという点に新規性がある。最終的に在宅医療の普及のためのモニタリング指標を提示することを計画しており、国や市町村の政策立案に資するという観点で創造性に富むものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では本邦の約4044万人が加入している、国内最大の保険者である全国健康保険協会のレセプトデータ(診療報酬明細書)を用いた。2020年のレセプトデータを対象とした。在宅医療の利用の指標として在宅医療関連の算定の有無を用いた。本研究ではその中でも訪問看護の利用に着目した。個人の社会経済的要因の所得の指標としてレセプトデータの被保険者の標準報酬月額を用いた。 分析では全国に住む全年齢のうち訪問診療を利用している人を対象とした。在宅医療のなかでも訪問看護の利用の有無を目的変数として、市町村の社会経済的指標を説明変数とした。47都道府県・1190市町村の異なる地域レベルを同時に考慮したマルチレベル分析を行った。個人の年齢・性別・所得を調整した。訪問看護の利用と市町村の社会経済的指標の関連を明らかにしており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は個人の特性である性別・年齢・所得で層化した分析を行い、訪問看護の利用と地域の社会経済的指標の関連にいついて各集団の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス禍のためオフラインでの会議や出張が難しく、オンラインで会議等を行ったため。
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