2021 Fiscal Year Research-status Report
DNA methylation analysis of tissue specificity and chronological changes in mouse model of human child abuse
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21K21124
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡野 雅春 日本大学, 歯学部, 助教 (70906544)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 児童虐待モデルマウス / DNAメチル化解析 / リアルタイムPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
児童虐待被害の有無は、被虐待者の訴えや身体所見から判断されており、客観的な評価は難しいため、虐待被害の新たな指標が社会的に求められている。近年、被虐待者のDNAメチル化状態が、健常者とは異なるという注目すべき発見がされた。この報告を発展させ、本研究ではマウスを用いて児童虐待ストレス(特に、ネグレクト)によるメチル化状態の変化を調べることを目的としている。法医鑑定への応用に向けて、マウスを用いたストレス相関因子としてのDNAメチル化状態の基礎データは、ヒトでの知見収集に先立って必ず必要な情報である。 実験計画時に予定していた手法であるメチル化特異的プライマーを用いたリアルタイムPCR (Methylation specific primer; MSP) 法は検出感度が低いと考えられたため、DNAメチル化状態の変化の検出が難しいことが予想された。そのため、実施者は、より感度の高いDNAメチル化解析法であるメチル化特異的高感度融解 (Methylation-specific High-resolution Melting; MS-HRM) 法に着目した。これは、法医学分野に応用した際に、少量のゲノムDNAから、正確に評価を行うためにも、より検出感度が高い手法が求められるためである。これまでの実施者の研究によって、MS-HRM法によるゲノムDNAのメチル化状態を推定する手法を当講座内にて確立した。また、マウスの母子分離処置は、当講座内で複数回実施し、生後15日目の母子分離処置終了まで完遂した。 これまでの研究では、母子分離処置後の子マウスの前脳の一部を用いたMS-HRM解析を実施した。この成果として、有意差は認められていないものの、DNAメチル化の小さな変化を有する神経伝達に関連したある特定の遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画時に予定していたMSP法は、検出感度が低いことが講座内での実験および文献から考えられた。このため、ゲノムDNAに生ずるメチル化率の小さな変化を検出することが困難と予想された。そこで実施者は、MSP法に代わる手法として、MS-HRM法に着目した。このMS-HRM法によって、測定したいサンプルのゲノムDNAメチル化率を、既知のメチル化率のスタンダードDNAを用いて推定する手法を講座内で確立することに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的解析法を用いて、より大きなメチル化変化が生ずる遺伝子を同定する。この際に、網羅的解析法の手法の中から、ゲノムDNAのメチル化またはmRNA発現量を解析できる手法を選び、実施したい。この網羅的解析の結果から、新たな遺伝子を絞り込み、MS-HRM法によるメチル化率の推定を行う。 実施者による母子分離処置後の子マウスのゲノムDNAにて同定した、メチル化の小さな変化を有する神経伝達に関連した遺伝子について詳細に調べる。DNAメチル化の小さな変化が、遺伝子の発現量にどのように影響するのかを確認する。この遺伝子のmRNA発現量を、子マウスの前脳組織を用いて調べ、転写産物量の変化が認められるかを確認する。
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Causes of Carryover |
母子分離処置を行う際に、複数の母マウスを同時に飼養することを計画し、マウスの購入金額を見積もっていた。しかし、母子分離処置は、母マウスの喰い殺を防ぐために飼養に際して細心の注意を払う必要があり、数多くの母マウスを同時に飼養することが難しかった。このため、マウス購入数が計画より少なく、未使用金が生じた。母子分離処理を行う時間や日程をずらすことで、複数の母マウスを同時に飼養できるように改善したため、次年度繰越金と翌年度分として請求した助成金を合わせてマウスの購入、DNAメチル化解析用試薬および網羅的メチル化解析にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)