2023 Fiscal Year Research-status Report
Developing child and family centered care model that supports HOPE for children with cancer and their parents at the end of life
Project/Area Number |
21K21143
|
Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
平田 美佳 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40285325)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2025-03-31
|
Keywords | End-of-Life Care / 小児緩和ケア / 遺族 / 脆弱性 / 倫理的配慮 / 質的研究 / 利益と負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の問いは「こどものいのちが失われるかもしれないという状況で、こどもと家族は何に希望を持ち、何を支えに生きるのか、生きる強さは何によるものなのか」であり、本研究はこどもを亡くす(亡くした)母親が「生きる」ということの内的メカニズムを探求する研究となり、その成果は昨年度報告した。 本研究は、脆弱性の高い遺族を対象とした質的研究であり、先行研究の「遺族研究において将来の研究対象者への倫理的配慮を考えるために、対象者の研究参加の利益と負担の評価を研究デザインに含めること(Weaver, et al.,2019)」という提案に基づき、研究のデザイン設計に、倫理的配慮の評価と考察をも含めることとした。その結果、遺族が研究参加による負担としては、面接前の不安やあふれ出るわが子への思い、研究説明書の言葉への敏感な反応があり、面接前からケアとしての配慮を必要とすることが明らかとなった。一方、対象者全員が研究参加はよい経験だったと評価し、【心のうちにしまっていた記憶の蓋をあけるきっかけ】【改めて、死別したこどもに思いをはせる時間】【語ることによる生きる力の高まり】【誰かに、何かに貢献できる喜び】などの研究参加の利益が明らかとなった。この研究結果と質的研究結果を統合して分析し、母親がこどもを語り、苦しみを語り、亡くなった実在しない子どもの存在を感じることにより、死別後もこどもに生かされている母親の生きるありようが明らかとなり、研究参加自体が、母親の生きる力の軌跡をなしていることが明らかとなった。本研究により、遺族研究は適切な倫理的配慮により対象に多くの利益をもたらすケアとしての意味、希望(hope)をももたらすことが示された。また、研究者に求められる資質のひとつとして、臨床的センシティビティがあることが示され、遺族研究における倫理的配慮のあり方についての示唆も得られることとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.本研究の成果である「子どものがんの発病から死を迎えるまで子どもの病と闘った母親の生きる力の軌跡」の一部「母親の”希望と時間の意味づけの変容のプロセス”」を日本緩和医療学会(2023年7月)にて口演発表を行い、第28回日本緩和医療学会学術集会 優秀演題口演発表賞を受賞した。
2.本研究のデザインに、脆弱性の高い対象が質的研究に参加する利益と負担に関する倫理的考察を行うことを含め、その考察論文を日本看護科学学会誌に投稿し採択された。 3.本研究で生成された理論の臨床活用という最終目的をめざし、理論を基盤としたケアモデル案の作成は達成したため、実装に向けての方略を今後検討していく予定である。 4.本研究の論文投稿および書籍の出版も予定している。 教育業務・大学運営業務やその他の研究へのエフォートが増加し、今年度は本研究活動へのエフォートが低くなり、研究の進捗が遅れているが、次年度で成果の公表と実践への活用の達成をめざす。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の成果である「子どものがんの発病から死を迎えるまで子どもの病と闘った母親の生きる力の軌跡」を、海外学術誌に投稿し、知見を広めていく予定である。 そして、本研究で生成された理論の臨床活用という最終目的をめざし、理論を基盤に構築したケアモデルを小児がん関連の国際学会看護シンポジウム(SIOP Asia 6月23日開催)で発表するとともに、その実装に向けての方略を探っていく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れており、次年度は研究成果の国際誌への投稿や書籍の刊行が予定されている。その段階で、投稿に係る費用が発生するため使用額が生じている。
|
Research Products
(3 results)