2021 Fiscal Year Research-status Report
新規前処理法を用いた尿中薬毒物LC-MS/MS分析法開発
Project/Area Number |
21K21152
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
松尾 友仁 愛知医科大学, 医学部, 助教 (00908824)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子組換え β-グルクロニダーゼ / 室温加水分解 / LC-MS/MS / 尿中薬毒物 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医解剖試料の薬毒物分析では、腐敗などの影響で測定試料が劣化している場合が多く、LC-MS/MS(液体クロマトグラフタンデム質量分析装置)へ導入する際に試料の前処理が非常に重要である。摂取した薬毒物は、内因性物質(グルクロン酸や硫酸塩等)との抱合体として尿中に排泄され、遊離体または未変化体が尿中に微量しか存在しない物質もある。そのため、より正確な尿中薬毒物濃度を測定するためには, LC-MS/MS分析前に抱合体を加水分解する必要がある。 今年度は、尿中夾雑成分除去カラム(ISOLUTE HYDRO DME+,Biotage)による尿試料の前処理を検討し、抽出時に必要なアセトニトリルの量、および抽出時の遠心条件を最適化することができた。次にグルクロン酸抱合体が尿中の主な代謝物である5種類の薬毒物(11-nor-9-carboxy-tetrahydrocannabinol (THC-COOH), oxazepam, lorazepam, temazepam, amitriptyline)を対象として、室温で加水分解が可能な遺伝子組換えβ-グルクロニダーゼ(B-One, KURA biotech, またはIMCSzyme RT, IMCS)を検討した。その結果、B-Oneで5分、IMCSzyme RTでは15分と短時間で対象薬毒物5種類全てを十分に加水分解することが可能であった。従来、強酸や強塩基あるいは酵素を用いたグルクロン酸抱合体の加水分解では、加温条件、反応時間などをそれぞれの薬毒物に応じて最適化する必要があった。しかしながら、本研究の加水分解では加温が不要なため、ISOLUTE HYDRO DME+カラム内で加水分解することができ、前処理過程を迅速かつ簡便にすることができた。今後、さらに検討を進め、LC-MS/MSよる迅速で簡便な尿中薬毒物の分析法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とした5種類の薬毒物(11-nor-9-carboxy-tetrahydrocannabinol (THC-COOH), oxazepam, lorazepam, temazepam, amitriptyline)のグルクロン酸抱合体を、室温で加水分解が可能な遺伝子組換えβ-グルクロニダーゼ(B-One, KURA biotech, またはIMCSzyme RT, IMCS)を用いて期待通りに短時間で加水分解することができた。加えて、尿中夾雑成分除去カラム(ISOLUTE HYDRO DME+,Biotage)内で加温せずに加水分解できたことで、試料の前処理を簡便化することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
尿中夾雑成分除去カラム(ISOLUTE HYDRO DME+,Biotage)で150μLを超えた試料を前処理すると塩が析出し、LC-MS/MS(液体クロマトグラフタンデム質量分析装置)での測定時に詰まりの原因となっている。加水分解の反応に必要な尿試料、バッファー、加水分解酵素、内部標準物質の量を検討し、加水分解反応と前処理の最適化を実施する。その後、確立した前処理法でバリデーション(検出下限、定量下限、検量線、精度、真度、マトリックス効果、回収率)を実施して、妥当性を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響とサプライチェーンの問題により主となる必要物品の納品が大幅に遅延したことによる。従って、次年度に持ち越した物品費(消耗品費)は本年度に使用する予定である。
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