2021 Fiscal Year Research-status Report
質量分析を用いた胃内容物精密分析による死後経過時間推定法の確立に向けた検討
Project/Area Number |
21K21153
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
森 一也 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (60796738)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 死後経過時間 / 質量分析 / 胃内容物 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学分野において、死後経過時間を推定することは極めて重要な事項である。しかしながら、現段階では死後経過時間の推定には確固たる指標が存在せず、種々の情報を組み合わせることで推定に至っている。そこで、本研究では新たな死後経過時間推定のための1つの指標確立を目的とし胃内容物に着目した。これまで胃内容物を用いた死後経過時間の推定は行われているものの、視覚的情報等を基にした主観的な要素が強く確固たる指標になるとは言い難い。よって本研究では、胃内容物を用いた客観的な推定方法の確立を目指すものである。具体的には、質量分析法を用いて、胃内容物に含まれる食物の消化分解過程で出現するアミノ酸等の一次代謝産物を同定し、それらの経時的な挙動変化を確認することで迫ろうとするものである。分析に使用する胃内容物のサンプルは、法医解剖時に胃内容物として認められることが多く、日本人の主食である米飯とした。基礎データの集積を目的として、人工胃液と米飯の反応をin vitroで進め、分析を行うための前処理方法や条件設定の検討が終了し、まずは室温にて人工胃液と米飯を反応させたものを経時的に分析した。結果として、一部のアミノ酸等の発現については、統計学的有意に経時的な変動が認められたことから、これらの方法で分析することにより、推定指標の1つになり得る可能性が示唆された。今後は、人工胃液と米飯を反応させる温度設定、すなわち通常体温状況や死体現象の1つである体温冷却を加味した状況での反応を行い同様に解析を進め、死後経過時間の推定の確固たる指標になりうるのかどうかの検討を行う予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験計画通り、解析に最も適したカラムの選定や諸々の分析条件の設定も終了した。また分析に使用する食品については、法医解剖時の胃内容物に確認されやすいことや、食品分析系領域において解析が比較的進められている米飯を分析サンプルとして使用することとした。米飯と人工胃液との反応時間についても、各時間での解析の結果、12時間を最大値とし、1時間ごとの経時変化で確認する等が決定しており、また解析結果の一部を学会にて発表予定であることからも、おおむね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究計画に従って、研究を進めていく予定である。具体的には、これまでに決定した分析方法等をもとにして、通常の体温状況や死体現象の1つである体温冷却を加味したうえで、米飯と人工胃液の消化反応を1時間ごとに解析することで進めていく。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張がオンライン学会に変更されたことによる旅費の未使用や、購入予定であったクールインキュベーターが実験の条件設定に必要でなくなり、購入を翌年に回すことにしたため、次年度使用額が生じた。次年度は現研究より進んだ温度変化を加味した状態で分析を行うために必要なクールインキュベーター等に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)