2022 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸によるミトコンドリアおよび全身性の代謝適応の解明
Project/Area Number |
21K21249
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 謙也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40909917)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 乳酸 / ミトコンドリア / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳酸が骨格筋ミトコンドリアの機能に与える影響を明らかにすることを目的として実験を行った。雄性ICRマウスに対して、体重1 gあたり1 mgの乳酸ナトリウムを4週間腹腔内投与し、骨格筋を採取した。採取した骨格筋からミトコンドリアを単離し、ミトコンドリア呼吸機能の指標となる酸素消費速度を測定した。その結果、乳酸投与によって、ピルビン酸+リンゴ酸およびグルタミン酸+リンゴ酸を基質とした複合体I由来の最大呼吸が有意に上昇した。一方で、コハク酸 + ロテノンによる複合体II由来の最大呼吸および基底呼吸は、乳酸投与によって有意に低下した。オクタン酸 + リンゴ酸を基質とした呼吸に変化はみられなかった。次に、乳酸投与による呼吸機能変化のメカニズム解明のために、単離したミトコンドリアを対象として、呼吸鎖複合体酵素活性を測定した。乳酸投与によって、複合体I酵素活性は上昇傾向を示し、複合体I + III酵素活性および複合体IV酵素活性は有意に上昇したが、複合体II酵素活性に変化はみられなかった。また、複合体I由来の最大呼吸と酵素活性の間に有意な正の相関が認められたが、複合体II由来の呼吸と酵素活性の間に相関はみられなかった。さらに、ウエスタンプロット法により単離ミトコンドリアにおける呼吸鎖複合体構成タンパク質量を測定したところ、複合体Iの構成タンパク質であるNDUFS4が乳酸投与により有意に高い値を示した。さらに、ミトコンドリアの超複合体について検討したが、乳酸投与による変化はみられなかった。 以上の結果から、乳酸は複合体Iの構成タンパク質の一部を増加させることにより複合体I酵素活性を上昇させ、複合体I由来の呼吸能力を向上させる可能性が考えられる。また、複合体II由来の呼吸機能の変化に複合体IIの構成タンパク質量や酵素活性は関与しない可能性が示唆される。
|