2022 Fiscal Year Research-status Report
がん悪液質の骨格筋代謝障害に対する軽度高気圧酸素の環境を用いた治療戦略
Project/Area Number |
21K21254
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平林 卓己 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (20911150)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | がん悪液質 / 骨格筋 / 軽度高気圧酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質に伴う骨格筋の代謝障害の原因は,体内の酸素濃度と筋毛細血管数の減少に伴う骨格筋内の低酸素状態である.本研究の目的は,がん悪液質の骨格筋代謝障害に対する軽度高気圧酸素環境の効果を検証することである.2021年度は,軽度高気圧酸素環境への曝露が健常者の血流増加および基礎代謝の亢進を誘導する可能性を確認した.2022年度は,B16F10細胞の尾静脈投与によって作製したがん悪液質モデルマウスを用いて,がん悪液質の骨格筋代謝障害に対する軽度高気圧酸素環境の治療効果を検証した.はじめに,がん悪液質モデル動物に軽度高気圧酸素曝露を8時間/日実施し,がんが進行しないか確認した.がん悪液質モデルでは,体重減少,飼料摂取量の減少,肺結節数増加,骨格筋量減少,脂肪組織量減少を認め,軽度高気圧酸素環境でがんの進行が増悪することは観察されなかった.これらの結果から軽度高気圧酸素環境への曝露はがんを進行させずに治療に導入できる可能性が示唆された.次に,がん悪液質の骨格筋代謝に及ぼす影響を検証した.がん悪液質モデルでは骨格筋内のミトコンドリア酵素活性の低下を示した.これに対し軽度高気圧酸素はミトコンドリア酵素活性の低下を抑制することが出来なかった.また,がん悪液質の骨格筋内微小循環に対する影響も検証した.がん悪液質モデルでは,血管退行因子が増加し骨格筋内の毛細血管退行を認めた.一方,軽度高気圧酸素環境はがん悪液質に対する毛細血管退行を抑制することが予測されていたが,予測とは反対に骨格筋内の毛細血管退行を進行させていた.これらの結果から,健常状態とは異なり,がん悪液質状態では軽度高気圧酸素環境の曝露によって骨格筋の微小循環を増悪させてしまう可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は,新型コロナウイルス感染症の影響や実験動物モデルの作製にいくつかの問題が生じたことから当初の予定より遅れた.2022年度は,実験モデル動物の確立および介入実験が完了した.本研究は当初の計画よりもやや遅れているが,現在は実験で得られたサンプルを用いて解析が行える状態にあることから本年度で計画を完了することが出来ると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
実験で得られたサンプルを用いて,骨格筋の毛細血管およびミトコンドリア機能を免疫組織化学染色,Western blot法,RT-PCR,ELISA等によって解析し,それらを指標として詳細な効果判定を実施する予定である.
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも研究がやや遅れているため,本年度購入予定であった解析用の試薬や抗体を購入しなかったため相当額が次年度へと繰り越しになった.
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Research Products
(5 results)