2021 Fiscal Year Research-status Report
膝関節疼痛治療の標準化に向けた「膝の痛みの地図」の形態学的解析
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21K21266
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
櫻屋 透真 朝日大学, 歯学部, 助教 (60912855)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 感覚神経 / 膝関節 / 肉眼解剖学 / 末梢神経 / 大腿神経 / 外側大腿皮神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、膝関節における感覚神経を対象に、詳細な肉眼解剖学的解析および組織学的解析を行うことで、膝関節における感覚神経の分布を詳細に明らかにするとともに、その末端の位置および形態から、分布する感覚神経の機能や伝達経路、その過程で生じる障害についての解剖学的基盤を構築するものである。これまで、解剖用遺体2体4側の下肢を用いて、まずは肉眼解剖学的解析を行い、大腿神経および外側大腿皮神経の走行に関する詳細な知見を得た。大腿神経前皮枝のうち最も内側の枝は閉鎖神経の内側皮枝と交通しており、また大腿神経前皮枝の大腿前面中央付近に分布する枝は近位において陰部大腿神経大腿枝と交通する様子も認められ、大腿前面において分布するそれぞれの皮神経は、交通しながら下行して遠位の支配領域へと分布してゆくという知見を得た。また、一部の神経枝について肉眼解剖学的に観察可能な範囲を超えて観察を行うため、組織学的解析を行い、感覚神経が侵入部位から方向を大きく変えながら密性結合組織内を走行して膝蓋骨近傍まで達することを明らかにした。さらに大腿後面から膝関節後面にかけて解剖を行い、先行研究において示されている坐骨神経の枝である関節枝が膝関節関節包に侵入することを確認した。こうした知見から、膝関節に分布する感覚神経についてはこれまで明らかにされていない分岐元および走行経路の存在が示唆された。今後は例数の増加および観察対象とする神経の追加によって、更なる成果を得ることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は初めて教員として採用された年度であり、研究活動スタート支援として10月に研究費が交付されたのち、まずは新規着任地における研究環境の整備に時間を費やすこととなった。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、学内での活動制限により研究時間の削減を余儀なくされたほか、感染対策として定員を減らし倍の回数で講義および実習を実施するなど教育業務の倍増もあった。今後は、整えられた研究環境のもと研究が実施可能であり、また業務遂行能力の向上、感染拡大下における教育業務の改善および効率化なども加わって、研究はより進展することが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究費を用いて、新規着任地において、研究に必須である機器の設置をはじめとする研究環境の整備を行い、研究を遂行することが可能な状態となった。肉眼解剖学的解析の成果は順調に得られつつある。現在まで知見を得ることのできた大腿神経および外側大腿皮神経について、さらに例数を追加してその詳細を調査するとともに、今後は閉鎖神経や伏在神経にも対象を拡大して更なる研究を進めたい。また、組織学的解析についても予備的に遂行中であり、次年度は新たな観察視点からの知見を得ることが期待される。次年度が最終年度であるため、論文の執筆や学会発表などによる研究成果の報告にも注力したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大によって、参加予定であった学会がWeb開催へ変更され、学会参加のための旅費が少なくなったことが主な要因である。次年度は新たな手法での研究推進に伴い消耗品の使用増加が見込まれるため、その用途に充てる計画である。また、最終年度となるため、論文執筆にかかる費用にも使用する見込みである。
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