2021 Fiscal Year Research-status Report
NASH発症メカニズムの解明-ミトコンドリア障害はどのように寄与するか?-
Project/Area Number |
21K21273
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 智之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (10909774)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / ミトコンドリア障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、非アルコール性脂肪肝炎(以下、NASH)発症に対する肝ミトコンドリア障害の寄与を示すことを目的とし、食欲の抑制に働く因子であるメラノコルチン受容体4を欠失したマウス(以下、MC4R欠失マウス)を用いたNASH動物モデルで検討を行う計画である。 本年度は、MC4R欠失マウスを用いる前の予備的な検討として、野生型マウスにNASH誘導食を給餌するNASHモデルにおいて肝ミトコンドリア障害の関与を検討した。その結果、肝ミトコンドリアはNASH発症よりも前の時点で障害されていることが明らかとなり、とくにミトコンドリア障害の一種である膜透過性遷移(MPT)が起きやすい状態になっていることが示された。この結果を踏まえ、NASH誘導食の投与と並行してMPT阻害剤を投与したところ、肝臓への脂肪蓄積とそれに続く肝臓での炎症応答がMPT阻害剤によって抑制された。以上の結果から、MPTがNASH発症に寄与していることが示唆された。 なお、本研究で炎症応答に続く反応である線維化に対するMPTの寄与を示すことも目的としていたが、上述の検討は線維化が生じるよりも前の時点で行っているため、線維化に対する寄与は調べられていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初使用する計画であったNASHモデルであるMC4R欠失マウスを用いた検討はできなかったが、別のNASHモデルとMPT阻害剤を用いた予備的な検討の結果、研究の目的であった「NASH発症に対するミトコンドリア障害の寄与の解明」は一定程度達成されたと考えている。しかしながら、本年度用いたNASHモデルはヒトの病態を必ずしも正確に反映するものではないため、依然としてMC4R欠失マウスを用いた検討は必要であり、これを次年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していたNASHモデルであるMC4R欠失マウスを導入し、本年度と同様に検討を進める。また、初代培養肝細胞とクッパー細胞の共培養などによるin vitroのNASHモデルを構築し、「ミトコンドリア障害がどの細胞で起こることがNASH発症に大きく寄与するのか」を解明する。
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Causes of Carryover |
メラノコルチン受容体4欠失マウスの購入に当たって必要であった所内申請ならびに審議に想定以上の時間を要し、当該マウスの購入ならびにそれに伴う実験が本年度内に実施できなかった。したがって、これらに使用予定であった金額を次年度に持ち越す必要が生じた。
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