2021 Fiscal Year Research-status Report
上半身の反動動作に貢献する肩甲帯の力発揮特性-棒高跳競技者を対象にして-
Project/Area Number |
21K21276
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
景行 崇文 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 契約研究員 (50913844)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 動産分析 / 筋力 / 肩関節 / オーバーヘッド動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
棒高跳は、ポールを用いて越えたバーの高さを争う競技であり、パフォーマンスが高いほど、ポールの湾曲が大きいことが報告されている。加えて、棒高跳競技者は、ポールを大きく湾曲させるために、肩関節が大きく屈曲したオーバーヘッド姿勢から肩関節を伸展し、ポールに大きな力積を作用させる必要がある。ただし、ポールの湾曲の大小と関係する棒高跳競技者の動作や筋力を検討した研究は見当たらない。そこで本研究では、棒高跳におけるポールの大きな湾曲と強く関係する上半身の動作を明らかにすること,上半身の動作と強く関係する肩甲帯筋の力発揮能力を明らかにすることを目的とした。 2021年度は、棒高跳が専門の男子学生競技者8名を対象に、動作分析および筋力測定を実施した。 動作分析では、モーションキャプチャーシステムを用いて、身体47点に貼付した反射マーカーの座標値を測定し、身体をリンクセグメントモデル化することで、跳躍動作を記述した。さらに、地面に埋設したフォースプレートを用いて、湾曲するポールに作用する力を測定した。その結果、並進運動する競技者のエネルギーがポールに伝わることでポールが湾曲し、ポールの湾曲が大きいほど、前後方向(助走の進行方向)の大きな力積がポールに作用したことが明らかとなった。今後は、ポールに作用した力積と肩関節の屈曲伸展動作との関係を検討する。 筋力測定では、多用途筋機能評価運動装置を用いて、肩関節を等速で伸展、内旋および外旋する筋力を測定した。データから各筋力の最大値を抽出し、左右比や内旋外旋比を算出した。今後は、動作分析で明らかになった肩関節の屈曲伸展動作と筋力との関係を検討する。 本研究では棒高跳を対象としたものの、テニスのサーブやバレーボールのスパイクなど、オーバーヘッド姿勢で肩関節を伸展する動作は様々なスポーツに含まれることから、本研究の知見は他競技にも応用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学生陸上競技者の競技シーズンは、主に春(4月~6月)と秋(9月~11月)に分かれている。そのため、実験への参加が競技へ与える影響や学生競技者に実験協力を募ることを考慮し、オフシーズンである2021年12月~2022年3月に実験を実施する計画を、当初立てていた。ただし、実験を行う弊センター内の施設で改修工事(照明工事)が行われため、2022年1月初旬から2月末まで実験を行うことができなかった。 加えて、例年6月に開催される学生の全国大会が、2022年は4月に開催されたことから、専門的準備を行う合宿を3月上旬に実施する大学が多く、実験の実施が3月中旬から下旬になった。 さらに、2022年3月中旬に行った実験の際、動作分析の跳躍中に対象者がマット外に落下する事故が発生した。そして、当該事故の原因を検証し、再発防止策を講じる必要があったため、3月下旬に実施予定であった実験を中止した。 よって、当初の計画では、2021年度内に対象者16名分のデータを取得する予定であったが、上記の理由のため、本報告を行う時点で8名分のデータしか取得できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年3月下旬に発生した事故に関する検証、および再発防止策の検討は既に行っており、現在、申請者の所属する機関における研究部門と連携して、実験再開に向けた最終的な確認を行っている。 事故に関する検証および再発防止策の妥当性の確認ができ次第、学生棒高跳競技者(2022年3月下旬に参加予定であった競技者を含む)に実験の協力を募り、残り8名分のデータを取得する。 取得した対象者16名のデータについては、上位群(自己最高記録が5.20m以上の全国大会出場レベル8名)と下位群(自己最高記録が5.20m未満の一般学生レベル8名)に分け、動作分析および筋力測定の結果を群間で比較することによって、パフォーマンスの高い棒高跳競技者、特に、ポールを大きく湾曲させることのできた棒高跳競技者の動作や体力を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験に必要な主な人件費・謝金は、申請者が所属する機関の内部研究費と併用して支出した。さらに、関東に所在する大学の学生競技者から実験協力の同意を得たことよって、旅費を当初の計画より大幅に削減できたことに加え、研究対象者自らが棒高跳の跳躍に用いるポールを運搬したことによって、ポールの輸送費を削減できた。これらの理由によって、次年度使用額が生じた。 2022年度は所属機関の内部研究費を併用しないため、8名分の実験を行うのに必要な人件費・謝金、旅費および物品費に次年度使用額を充てる予定である。
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